こんにちは! 料理研究家のナカイです!
前回は「仙台の牛たん焼きは、他とどう違うの?」を調査したのですが、その時に食べた「牛たんの炭火焼き」の味が忘れられず……、もっと仙台の味を知りたい! ということで、こうして仙台へもどってきました。
私が住む北海道には、ラム肉はもちろん、生ほっけや行者ニンニク、かじかなど、独自の食材があります。仙台にも牛タン以外の「その土地で愛される味」がきっとあるはず!
そこで今回は、地元のスーパーを探検することに! スーパーで見つけた仙台独自の食材を通じて「仙台の味覚」に迫っていこうと思います!
スーパーマーケットで出会った9つの仙台名物
今回は仙台市内にある3つのスーパーマーケット(※1)におじゃましたところ、9つの仙台名物に出会いました! 早速見ていきましょう!
まずは「笹かま」!!
昔、三陸沖で白身の魚の大漁が続き、その保存と利用のため、すり身にして笹の葉に似せて焼いたのが笹かまのルーツなんだとか。
大手の「かまぼこの鐘崎」や「かまぼこ佐々直」、「塩釜の水野蒲鉾」をはじめとする7社20種類ほどの笹かま商品が並べてありました! 青しそ入りやチーズ入りなどもあるので食べ比べするもの楽しいですね!
晩酌のお供に鐘崎の大漁旗を購入しました。大きくて肉厚、ぷりぷりみずみずしくて最高に美味しかったです! 1枚ずつ買えるので、お土産にもホテルでの一人晩酌にもおすすめです。
笹かまに負けないくらいの存在感だったのが「納豆」売り場。納豆は伊達政宗が保存食として奨励していた食材です。
宮城にはパッケージがこけし柄の「わたり納豆」や、 “さっぽろ“ というネーミングが気になりすぎる「グリーンパール納豆」(さっぽろには売ってません)など、30種類の納豆があります!
ちなみに、納豆の大量生産の発祥は仙台! 不安定で品質が安定しないわらで作る納豆に対し、煮豆大豆に納豆菌を付着させ、温度などをきちんと管理することで品質の安定を可能にしました。
続いてお肉コーナーへ行ってみると、ありました! 仙台名物の王道「牛タン」!
やっぱり仙台の家庭でも「牛たん」食べること多いのでしょうか? ちなみにジンギスカンが有名な札幌では、スーパーでラム肉が並べられ、家庭でよく食べています!
宮城の方々のお酒のお供といえば「ほや」。マボヤという種類で、夏が旬の食材です。その見た目から別名「海のパイナップル」という呼び名もあるそう。
貝と思いがちですが、実は貝とは違う種類の海産動物です。味の好き嫌いがはっきり分かれるようですが、鮮度が良いほどおいしいんだとか。栄養価はビタミンB12と鉄分や亜鉛がやや多めです。
「冷やし中華」の発祥は仙台ってご存知でしたか?
昭和12年に仙台市内にある中華料理店「龍亭」の創業者さんが、夏場でもさっぱりと食べられる涼拌麺(リャンバンメン)を開発し、これが冷やし中華の元祖になったそうです!
お土産として購入したのは「仙台味噌」「仙台麩」「白石温麺(うーめん)」。
仙台味噌は、辛口の赤味噌です。塩分は他の味噌より高めで、長期熟成され旨味が豊富、すっきりとした飽きのこない味で、香り豊かなのが特長です。
伊達政宗が仙台城下に設置した味噌醸造所で作らせた味噌にならって製造されている味噌だそうですよ。
仙台麩は、宮城県北部の登米地方に昔から伝わる食材。小麦粉のたんぱく質成分のグルテンを油で揚げて作ったあげ麩です。フランスパンのような形をしているので、適当な厚さに包丁で輪切りにしてから使います。カツ丼のカツの代わりに仙台麩を使った料理「油麩丼」も有名。
宮城県白石市で生産される特産品「白石温麺」。独自の製法で油を使わずに作られた10cmほどの短いそうめんです。
▲お土産の白石温麺で「おくずかけ」をつくってみました!
「白石温麺(うーめん)」を使った料理として、お盆やお彼岸には欠かせない郷土料理「おくずかけ」があります。
おくずかけは「お葛かけ」と書くように、片栗粉などでとろみをつけたしょうゆ味の汁料理。温麺(うーめん)に具材は野菜、油揚げなど、家庭や地域で具や味は様々だそうです。
そんなこんなで、ひととおり仙台名物を見つけたと思っていると……
あっ!!!
仙台の甘味といえば「ずんだ」! すっかり忘れてました……!!!
仙台にはずんだシェイクやずんだソフトクリームなど、ずんだを使ったスイーツがいたるところにあるんですよね。仙台駅構内でも、何度も「ずんだ」という文字を見かけました。
店内にあったのは、ずんだのおはぎ。おはぎもいいけれど、やはりここはずんだ餅が食べたい……。ずんだ餅の誘惑に負け、スーパーマーケットを後にして、ずんだ餅の名店へ向かうことにしました!
創業130年以上の名店「村上屋」で、本場の〝づんだ餅〟を味わう
餅屋は餅屋ということで、向かったのは地下鉄南北線「五橋駅」から徒歩7分
JR「仙台駅」から徒歩15分 にある「村上屋餅店」。
創業130年以上の歴史を持ち、「仙台でずんだ餅と言えばここ!」と、ファンも多い有名店です。
▲「ずんだ色」の綺麗なのれんを見て、期待しちゃう♡
ナカイ:こんにちは〜!(ガラガラガラ〜)
ナカイ:!!!(さすが名店……壁に有名人のサインがたくさん!! やっぱりすごい店なんだ)
店員さん:いらっしゃい〜、もう残りわずかですよ〜。
ナカイ:え!?!?!?
ナカイ:ほんとだ……。
店員さん:うちの商品は全部社長の手作業だから、作れる数が限られているんだよ。
……ぐぬぬ。社長の職人さんとしてのこだわりを感じて、ますます食べたくなる! すみません、づんだ餅を……まだ残っているづんだ餅をください!!
村上屋餅店さんでは、テイクアウト商品だけでなく、イートインもあります。
注文すると、出来立ての「づんだ餅」をその場で味わうことができます!
やった! きました!! づんだもち♪
とても綺麗な黄緑色。食べるのがもったいないほどみとれちゃいます!
それでは早速……いただきまーす!!!
口にいれてびっくり! 舌触りなめらかで、ふんわりクリーミー!
甘さ控えめなので、甘いものが苦手な方も食べやすそう!枝豆の風味を生かす、砂糖と塩の絶妙な加減がたまりません。
これまで食べたずんだは緑色の餡って感じでしたが、これはごまかしていない枝豆そのものの味。これが本物の「づんだ」なのね(泣)
餡だけではなく、お餅も柔らかく、弾力があってとてもおいしい! 最初は「食べ切れるかな?」と思うほどボリューミーに感じましたが、ふわっと軽い口当たりのお餅なので、さらっといけます。
ごま餡とくるみ餡の3食セットもいただきました。
ごま餡とくるみ餡はガツンと甘め。優しい味のづんだがバランスをとっていました。
友達や恋人、家族とシェアするのもよさそうです!
村上屋のづんだ餅が美味しい秘密は手間を惜しまない「愛情」
あ〜〜おいしかった〜!! と大満足。このままづんだ餅のおいしさの余韻に浸りたいところですが、料理研究家である以上、このまま帰れません! 村上屋の社長にづんだ餅の美味しさの秘密を聞いてきました。
ナカイ:社長、こんなにおいしいづんだ餅を食べたのはじめてです! おいしさの秘密を教えてください!!
社長:当たり前のことを、丁寧にやってるだけだよ。手間をおしまずにね。
ナカイ:(当たり前のことって!?!?)……材料にこだわっているんですか?
社長:材料は枝豆と砂糖と塩、水だけ。添加物とかは一切使っていないね。
ナカイ:とてもシンプル! どこの産地の枝豆を使っているんでしょうか?
社長:どこの何を使うってことを重視するんじゃなくて、品質の安定を優先してるね。その年の枝豆の出来によって、産地を決めて1年間はその枝豆を使っているよ。
ナカイ:なるほど!!
社長:あとは、枝豆の「薄皮」を丁寧に剥くことかな。鞘から出した豆を、水の中で丁寧にもみ洗いするんだよ。
ナカイ:枝豆の薄皮を全部を剥く、って口では簡単に言えますけど、大変ですよね!? 枝豆を茹でて鞘から出して、さらに薄皮をむいて、丁寧につぶして……手間のかかる作業ばかり。
ナカイ:でも、お餅にはたっぷりづんだ餡はかかっていたから、毎日たくさんの量を仕込でいると考えると……そうか、社長は仏なんですね!
社長:(この人なんなんだろう……)
社長:そうだナカイさん、せっかくだからみなさんに伝えてほしいことがあるんだ。
ナカイ:なんでしょう?
社長:づんだ餅って「す」に点々で、「ずんだ」って書かれていることが多いけれど、実は「豆」を打って作る、「豆打(づだ)」がなまって「づんだ」と書くんだよ。
ナカイ:え、そうなんですか!? そういえば村上屋ののれんにも「づんだ餅」と書いてあったような……。
社長:大正時代に、うちのじいちゃんが「づんだ餅」を販売したときからそう書いてるんだよ。
ナカイ:大正時代から!?
社長:村上屋餅店は明治10年創業で130年くらい歴史があるけど、3代目にあたるじいちゃんが、枝豆と餅を合わせて商品化したんだよ。それがづんだ餅のはじまりなんだ。
▲お店で配布しているづんだ餅のしおり
ナカイ:じゃあ、社長のおじいちゃんが現代の「づんだ味」商品ブームの生みの親じゃないですか!! づんだシェイクとかづんだケーキとかいろいろありますし!
社長:そうとも言えるのかな(笑) でも、じいちゃんは餅を美味しく食べてもらうために「づんだ餅」を商品化したんだ。「づんだ」で売れようとしたわけじゃないんだよね。餅屋は餅屋ってことだよ。
ナカイ:かっこいいー!!!
社長:昔は子供だった人が、今ではおじいちゃんおばあちゃんになって、懐かしいって食べにきてくれる。親子3代にわたってファンだって言ってくれるお客さんもいて嬉しいことだね。
社長:できれば「村上屋餅店」この先もずっと続いてって欲しいけど……なんせ跡継ぎがいないからね〜、独身だし! あ! そうだ、彼女募集中って告知しておいてよ!(笑)
ナカイ:それ、すごく重要じゃないですか! づんだ好きの女性のみなさん! 村上屋の社長の彼女大募集中です!!(笑)
【発見】仙台名物「ずんだ」の正しい表記は「づんだ」だった
▲街の和菓子屋さんで買ったづんだシェイク
づんだの原料である枝豆は、良質なたんぱく質とカロテンやビタミンCを多く含む美容と健康のためにぴったりの食材。今や枝豆は季節を問わず食べることができますが、昔は夏だけの季節ものでした。食欲が落ちがちな夏の栄養補給の一品としても優れています。
村上屋三代目の村上精次郎さんがそんな栄養のある枝豆を使って「づんだ餅」を商品化したのは、「おいしく食べて、健康に」というお客様への健康への思いがあったからだそう。心を込めて、できたての味を味わってもらいたいという「愛情」がづんだ餅をおいしくし、今もなお多くの人に愛されているんだと強く感じました。
そんなわけで、名店で仙台名物の「ずんだ餅」、いや「づんだ餅」のおいしさに酔いしれた料理研究家ナカイなのでした!
みなさんも、ぜひ仙台を訪れた際には、仙台名物のづんだ餅を堪能してみてくださいね! その土地の名物料理の歴史を紐解けば、おいしさも倍増するはずですよ!!
それでは、また〜!
※1:スーパーマーケット情報
・みやぎ生協木町店(仙台市青葉区木町通1-6-28)
→牛タン・ほや・仙台麩・仙台味噌・ずんだおはぎ
・イオン仙台店(仙台市青葉区中央2-3-6)
→かまぼこ・納豆・白石うーめん
・フレッシュフードモリヤ大学病院前店(宮城県仙台市青葉区支倉町4-40)
→冷やし中華
書いた人:中居香織(なかい かおり)
北海道札幌市出身、管理栄養士・料理研究家。 「キッチンから大切な人の笑顔と健康をつくる」をモットーに料理教室や食や栄養についてのセミナー、メディア出演などで活動。「おいしさ、健康、実践的、楽しい」を組み合わせた家庭料理を研究し 提案している。 趣味は旅行、今一番興味があるのは「日本中・世界中の食生活・食文化」。五感で味わって得た料理や食材の知識を、日々の研究活動に活かしている。