こんにちは! ライターの佐々木ののかです!
前回、空美ちゃんの実力と知識をまざまざと見せつけられ、飛行機がすっかり好きになってしまった私。
▼前回までのあらすじはこちら▼
ジャーン! というわけで、私たちは空港にやってきてしまいました!
しかもその空港とは、新千歳空港! AIRDOのハブ空港とも言うべき、大事な場所です。
ののか:いやいやいやいや、来ちゃったね~、空美ちゃん。これが空美ちゃんのキャリー? 何か旅慣れしてるって感じでカッコいいね。
空美:そうですか? ちょっとステッカーが貼ってあるだけで普通のキャリーですよ!
ののか:そうかな?……あれ、白いタグに何か書いてあるけど、あれ何?
ののか:CTSとは一体!?!?!?
空美:ののかさん、そんなことも知らないんですか? これはスリーレターですよ!
ののか:ん? なになに? スリーレター!?!?
空美:スリーレターも知らないで、飛行機好きは名乗れないですよ! 他にも、航空用語がたくさんあるんです。グランドスタッフになるにはどちらも覚えなければいけません!
ののか:別にグランドスタッフになんかならないんだけどな。
空美:まぁでも、せっかくAIRDOの本拠地とも言うべき新千歳空港に来たので、教えてもらいましょう!
ののか:(空美ちゃんが行きたいだけなのでは……?)
新千歳空港内AIRDOオフィスへ
というわけで、AIRDOのオフィスにお邪魔した私たち。ベア・ドゥに囲まれて空美ちゃんもウキウキです。
ののか:ねぇ、やっぱり空美ちゃんが来たかっただけなのでは……?
空美:あははっ! でも、スリーレターを学ぶと、飛行機に乗るのがもっと楽しくなりますよ! ね、トレーナーさん!
トレーナーさん:はい、きっと楽しくなると思います!
ののか:すみません、どなたですか……?
トレーナーさん:申し遅れました。私、AIRDOのグランドスタッフで新入社員教育を担当しています阿部と申します。
空美:阿部さんは、地上(グランド)スタッフの卵たちを育てるトレーナーさんなんですよね?
阿部さん:そうですね。今日はお2人にも特別に、グランドスタッフが学ぶべき知識を少しだけお伝えしていきます。
空美:やったー! 阿部さん、よろしくお願いします!
ののか:(顔見知りなの……?)
地上スタッフの基本のキ 3つのアルファベットで表すスリーレター
阿部さん:まずは「スリーレター」についてお伝えしていきますね。
ののか:あっ、さっきの「CTS」もスリーレターですよね? ……改めて、スリーレターって何ですか?
阿部さん:空港名を表すアルファベット3文字のこと ですね。お客さまの乗り継ぎ情報もスリーレターでやりとりするので、これを覚えていないと仕事が回らないんです。
ののか:なるほど! ちなみにさっきの「CTS」っていうのは何ですか?
空美:ChiToSe、の略ですよね?
阿部さん:正解です!さすがですね、空美さん。
ののか:すごいな。他にはどんなスリーレターがありますか?
阿部さん:スリーレターではなく「航空用語」という専門用語の類ですが、RSV、CNL、DLYなんかがありますね。
ののか:う~ん……わかった!さっきの要領で行くと、ReSerVation、CaNceL、DeLaY……とかですか?
阿部さん:そうです、正解です!
ののか:よっしゃ、英語ができればこんなの余裕ですね!
空美:(そんなこと言っちゃって大丈夫かな……?)
航空会社が使う"SMAP"とミスをなくすためのプラスアルファ
阿部さん:それでは今度はアルファベットの読み方について進めますね。ののかさん、アルファベットの読み方はおわかりになりますか?
ののか:いやいや、さすがにわかりますよ~。エー、ビー、シー、ですよね?
阿部さん:実は違うんです。
ののか:えっ、違うの?
空美:あっ、わたし多分わかります! A = アルファ、 B = ブラボー、 C = チャーリーですよね? あとは、Pはパパとか、Yはヤンキーとか。
ののか:あなたがB(ブラボー)ですよ、空美ちゃん……。でも、どうしてそんな読み方になったんですか?
阿部さん:これは、聞き間違いを防ぐためなんです。お名前のスペルを1文字でも間違えてしまうと、重大な事故に発展しかねないので、こうした工夫がされているんです。
ののか: 安全への配慮がものすごい。
阿部さん:安全への配慮とはまた違いますが、重要な単語を短縮した「航空用語」というものもあります。
ののか:あっ、さっきのRSVなどですね! 他にはどんなものがありますか?
阿部さん:ほんのごく一部ですが、 T/Oや、SMAPなんかがありますね。
ののか:それ、完全にTakeOutと最近解散したアイドルの名前ですよね?
空美:あははっ! ののかさん、違いますよ~。
ののか:えっ、空美ちゃんわかるの?
空美:はい。T/OはTake Offの略ですよね? つまり「離陸」の意。SMAPは、Spot-information Management and Planning system(スポット総合調整サブシステム)の略語で、航空交通流管理業務に必要なスポット運用状況等を全国のCADIN端末及びエプロン管理システムから収集、整理するとともにフローコントロール情報を関係機関等へ提供して、きめ細かな航空交通制御を実現するための支援システム(※)のことでしたっけ? 自信がないなぁ~。
(※国土交通省HPより引用)
阿部さん:空美さん、本当にすごいですね!全部合っていますよ。
ののか:震える。
合格点を越えなければ追試! グランドスタッフの“卵”が一人前になるまで
ののか:今日はサラッとだけ教わっている感じだと思うんですけど、実際のところ今日習った「スリーレター」と「航空用語」、「アルファベットの読み方」をマスターしたとして、全体の何割くらい習えた感じですかね? 3割くらい?
ののか:なんですか、その笑顔は。
阿部さん:ごめんなさい。0.1割にも満たない と思います(笑)。他にもアナウンスの文言など、覚えなければいけないことがたくさんあるんです。
空美:それ、全部覚えて現場に出るんですか!?
ののか:グランドスタッフさん歩く辞書説。
阿部さん:いえ。もちろん全部覚えるのがベストなんですが、本当にたくさんのことを覚えなければいけないので、「アンチョコ」を持参してカバーします。
ののか:アンチョコ?
阿部さん:現場に持っていけるようにグランドスタッフがそれぞれがつくる、お手製のノートのようなもののことです。
ののか:完全に食べものかと思いました。
空美:うわ~、びっしり書き込みがしてある……。グランドスタッフの研修って、一体どのくらいの期間あるんでしたっけ?
阿部さん:2カ月ですね。最初の1カ月間は1日8時間座学をして、もう1カ月でOJTをしながら覚えていきます。
ののか:えっ、じゃあ2カ月間でマスターするっていうことですか!?
阿部さん:そうですね。しっかり覚えてもらうために、前日習った分の確認テストを毎日やります。座学を学ぶ1カ月の間に大きなテストを2回します。合格点をクリアできなかった人は、合格するまで追試です。
ののか:高校のときの悪夢再び。
空美:ちゃんと覚えてもらうために、意識していることってありますか?
阿部さん:モチベーションを保ってもらえるように気を付けていますね。航空系の専門学校を出ている人とそうでない人や、本人のモチベーションによっても、覚えるスピードがどうしても違ってきてしまうので、少しでも頑張りを見せてくれたら褒めるようにしています。
ののか:阿部さんに教わりたい。
空美:大変なお仕事だと思うんですけど、トレーナーのお仕事のやりがいって何かありますか?
阿部さん:そうですね。やっぱり2カ月の研修が終わって、現場に出たときに新入社員の子たちが挨拶に来てくれるのが一番うれしいですね。頑張って教えてよかったなぁと思います。
ののか:自分の教え子たちと一緒に働くわけですもんね。それは感慨深いなぁ。
まとめ「安全を守るために覚えることがたくさんあった」
・空港名はアルファベット3文字の「スリーレター」で表す
・聞き間違いを防ぐためにアルファベットは独自の読み方を採用
・グランドスタッフさんたちは、カウンターに立つまでに相当量の勉強をこなしている
空美:やっぱりグランドスタッフさんってすごいなぁ。
ののか:うん、現場に立つまでの研修のお話を聞くと、カウンターに立っている人たちがさらにカッコよく見えるね。
空美:やる気が出てきました!
ののか:えっ、私は途方に暮れた。
空美:よ~し、次は現場ですね! ののかさん、行きましょう!
ののか:空美のガッツ、まじでB(ブラボー)。
そうして私たちはチェックインカウンターに向かうのでした。
「地上スタッフ編」に続く……。
書いた人:佐々木ののか
1990年生まれ、北海道音更町出身。高校までを十勝で過ごし、大学進学を機に上京。1年間のフランス留学を経て、現在は東京を拠点にライターとして活動中。2カ月に1度は帰省するほどの地元好きで無類のお酒好き。帯広のソウルフード「インデアンカレー」はシーフード派。
Twitter:@sasakinonoka