客室乗務員(CA)といえば、キラキラの笑顔と身にまとう華やかな空気……皆、一様に美しく輝いています。 本連載では、ライターの木村衣里がAIRDOの客室乗務員訓練の一部を体験、その美しさの裏に秘められた努力や訓練の厳しさをレポートします。
みなさんこんにちは。ライターのきむら いりです。
突然なのですが、飛行機のなかでもらえるサービスドリンクってよくないですか。あれ、いいですよね。
飛行機の中って機密性が高くて乾燥しているからか、地上よりもノドが渇きやすい気がします。そんなときに客室乗務員の方が持ってきてくれるドリンクって、とってもありがたいんですよね。まさに砂漠のオアシス的な。
▲これは以前、わたしがAIRDOを利用した際に撮影したもの。ベア・ドゥかわいい……。
AIRDOではこんな風に、ベア・ドゥのかわいいイラスト付きのコップでドリンクを提供してくれます。
飛行機に乗るたび、機内で提供されるドリンクやフードメニューへのこだわりもさることながら、気流が安定しない上空でさらりとドリンクサービスをやってのける客室乗務員のみなさんに感心してしまいます。
初回では客室乗務員が身だしなみにこだわる理由について、二回目は接遇マナーやアナウンスについて学びました。
第三回目となる今回は、客室乗務員の「ドリンクサービス訓練」に密着!
2016年11月入社の訓練生17名が受ける授業と機内訓練にお邪魔させてもらいます。
まずは機内設備やサービス知識をみっちり学ぶ
▲今日の教官は高嶋(たかしま)さんと、大楯(おおだて)さんのお二人
まずは座学から。CABIN ATTENDANT MANUAL、通称CAM(カム)と呼ばれるマニュアルを見ながら授業を進めていきます。このCAMには、勤務規則からサービス、保安、緊急対応、機体の情報、緊急介護などなど、客室乗務員にとって必要な知識がすべて載っています。
雷警報が発令時された際の対応策など、万が一に備えた知識も学ぶそう。
さらに、客室乗務員は飛行機に一番長く乗っている存在だからこそ、機体の異常やちょっとした変化にも気付けなくてはならないため、整備士さんと円滑な申し送りができるように、機体に関する知識も必要不可欠なのだとか。
国語辞典くらい厚さがあるCAMですが、客室乗務員のみなさんはその内容がまるっと頭に入っているんですって! むしろ、「そうでなければ客室乗務員にはなれません!」とのこと。
……すごい。
今回の授業の内容は主に、ギャレーと呼ばれる調理スペース内にある設備の場所や名称、ドリンクサービス時における注意事項など。
大楯さん:ドリンクサービスは、お客さまの水分補給はもちろんのこと、気分を害している方がいないか、不審な動きをする方がいないか、といった見回りも担っています。
ドリンクサービス中はお客さまに一対一で接するため、近い距離で顔色や表情、動きなどを確認することができます。これは保安目的でも非常に重要な時間であることを覚えておきましょう。
高嶋さん:お客さまの中には「北海道の航空会社ならではのドリンク」を楽しみにしている方が多くいらっしゃいます。さらに、客室乗務員と一対一で話せるタイミングというのは、お客さまからするとさまざまな要望を伝えるチャンスでもあります。
お客さまがドリンクサービスになにを求めているか? ただドリンクがほしいだけではない可能性を考えるようにしましょう。
たしかに「ブランケットがほしいな」と思っても、わざわざ呼び出しボタンを押すのはちょっと気がひけることって、あるんじゃないでしょうか。
わたしなんかはまさにそうなので、タイミングをうかがっていると「この人エスパーかな?」と思うようなタイミングで声をかけてくれる客室乗務員さんがいるのは、とってもありがたい。そうした声がけができるのも、こうしていつも「お客さまがなにを求めているか」「なにを考えているか」を表情から読み取っているからなんですね。
その後は、動画を見ながらドリンク作成の手順や各設備の名称などを確認していきます。
ドリンクサービス授業で習うポイントは以下の通り!
- 機内に存在する扉にはすべてロックがついている(しかもひとつの扉につき2〜3個はある)
- いつ突発的な揺れが発生するかわからない上空では、たとえ数秒間だとしても扉の開けっぱなしは厳禁!開けたらすぐ閉める、を徹底する(そのたびにロックもすべて開閉する)
- ドリンクサービスは前方から後方に向かって順に行う場合と、前方と後方から中央に向かって同時に行う場合がある(機内の状況によって変えているそう)
- ドリンクを配るときは奥(窓側)のお客さまから渡し、空いたコップを回収するときは手前(通路側)のお客さまから回収する(これは、食事中のお客さまの前を遮らないためであり、客室乗務員の腕が引っかかってドリンクをこぼしてしまうリスクを減らすためでもあります)
- 揺れが予想されるときは、通常よりもやや少ない量で提供する
- ポットの注ぎ口をお客さまに向けないようにする(特にホットドリンクなどは揺れによって飛び跳ねないよう、細心の注意を払う)
意識していないと気づかないような細かい部分にまで配慮されていることがわかります。こうしたポイントを知ると、飛行機に乗る楽しみがひとつ増えた気になりませんか。
実機に移動して、いざ実践!
3日間で計19時間ほどの授業を終え、いよいよ駐機場での実践訓練に挑みます。
空港職員専用のバスに乗り込み、飛行機へ。
「飛ばない飛行機に乗る」という非日常体験に、自然とテンションもあがります。
飛行機に乗り込んだら訓練開始です!
まずは教官から機内での注意事項などが説明されます。
真剣な表情でそれを聞く訓練生たち。
今日の訓練で使うのはB767-300ERタイプという、AIRDOのなかでも大きい機体。ギャレーが機体の前方、中央、後方の3箇所にあるため、訓練生も3チームに分かれて訓練を行うことに。
普段あまり目にすることのないギャレー内の様子。すべての扉にいくつものロックがついているのが見えます。
さきほど授業で習ったとおり、コーヒーのセットの仕方、各計器の見方や設備の名称などを確認しながら進めていき……
通常時のサービス手順に加えて、悪天候などで揺れが大きくカートを出せない場合の、トレーを使ったドリンクサービス手順も学んでいきます。
コップどうしのフチが重ならないように並べたら、トレーを持ってお客さまの元へ。
このとき、トレーの位置はお客さまの顔より上にあってはいけないんだそうです。
華やかに見える裏側に、その何倍もの苦労があった
こうして、実機での4時間におよぶ訓練を終えた訓練生のみなさん。せっかくなので、すこしお話を伺ってみることに。
木村:今日は初めての実機を使ったサービス訓練ということですが、実際にやってみて、どうでしたか?
訓練生:とても緊張しました……!
1カ月ほどモックアップという機内を模した訓練施設で練習はしていたのですが、実機のほうがずっと大きい印象です。
木村:なるほど。やはり実機となると勝手が違うんですね。
訓練生:あとはエンジン音などの騒音があるぶん、思っていたよりも声が通りにくいと感じました。
それに、頭で手順はわかっていてもいざ体を動かすとなると混乱してしまって……とても難しかったです。
木村:実際に訓練をしていくなかで、思い描いていた客室乗務員の姿とギャップを感じることってありましたか?
訓練生:保安要員という役割がこんなにも大きいとは正直思っていなかったですね。
訓練生:華やかに見えるようで、裏ではこんなにたくさんの細かい業務をテキパキこなしていたのか……というのは驚きでした。
訓練生:今日、ギャレーの中で作業をしてみたことで、お客さまの目に触れる業務は全体のごくごく一部であるということを実感しました。
木村:それはわたしも思いました! わたしたちが見ていた客室乗務員さんの姿はあくまで一面だったんだなぁ、って……。
お客さまを安全かつ快適に目的地までお連れするためには、目に見えないところでの努力の積み重ねが大事ということですよね。
訓練生:実際にお客さまの前に立つ日を想像すると、ものすごく緊張しますしプレッシャーも感じるのですが、それだけやりがいのある仕事だと思っています。スカーフを巻くのがたのしみです!
訓練を終えてみて……
今回はドリンクサービス訓練に密着させてもらいましたが、このほかにも機内販売などのサービス訓練から救急介護訓練、緊急訓練に至っては1カ月間みっちり授業と訓練を行い、全体で約3カ月(座学2カ月・OJT約1カ月)の訓練行程を経て、客室乗務員としてのデビューを果たします。
密着させてもらった彼女たちも、今年の2月からはすでにお客さまの前に立っているのだそう。
次にみなさんがAIRDOを利用する際には、彼女たちが乗っているかもしれません。
その際にはぜひこの記事を思い出し、彼女たちの努力に少しでも思いを馳せていただければ幸いです。
次回は客室乗務員への道の総仕上げとも呼べるメイクレッスンに潜入します! 客室乗務員の魅力を数倍にも引き上げるメイク術の秘訣に迫りましょう。
それでは!
書いた人:きむら いり
北海道函館市出身。プレスラボ所属の編集/ライター。企画したり取材したり執筆したり編集したり。動物が好きで、この世で一番愛らしいのはカバだと思っています。
Twitter:@i_s_ooooo