突然変なことを言うようだけど、一人旅の時代が来ているのではないかと思う。
旅行というのはみんなで楽しむもので、一人旅なんていうのは一匹狼を気取った変人がやること、と昔は思われていたらしい。
しかし徐々にそんな風潮も薄れ、ふらっと気軽に一人旅をする人がここ最近は増えてきているように思う。さらに、このコロナ禍のもとではリモートワークやワーケーションがトレンドになりつつある。
まさに一人旅にうってつけのタイミングだ。
そんなわけで10月のある日、行ったことのない土地に一人で行ってみよう、と思い立って、北海道の旭川に降り立った。
今回、一人旅の参考にしようと思っているのが、人気ドラマである『孤独のグルメ』と『サ道』だ。2つとも、旭川でロケをしている回があるのだ
酒は飲めないけれど、一人でメシ屋に入り好きな料理を頼みまくる井之頭五郎(『孤独のグルメ』の主人公)の姿は、一人行動を愛する者たちをとても勇気づけてくれる。
そして『サ道』も、中年男性が一人で全国各地のサウナを満喫する様子をとても楽しそうに描いた作品だ。
一人で好きなことをしている中年男性をひたすら楽しそうに描いた2つの作品に触発されて、僕は用もないのに旭川までやってきたのだ。
というわけでドラマの「聖地巡礼」も織り交ぜながら、旭川ならではの一人旅の楽しみ方を探っていこうと思う。
※この記事は、旭川市によるスポンサードコンテンツです
※取材・撮影は新型コロナウイルス感染症対策を講じた上で10月中旬に実施しました
サウナで宇宙と人生のことを考えた
細かいことは考えず、今回はただサウナに入り、ただメシを食うだけの旅にしたい。
そもそも今、旭川ではサウナがとても盛り上がっていてアツいらしい。まずは、旭川のサウナ好きが集まるという銀座サウナにやってきた。
この銀座サウナは、地元のサウナ愛好家たちで作るチーム「アサヒサウナ」が運営する、2021年オープンの新店だ。
入場料を払えば、腕にリストバンドを巻いてもらえる。ライブ会場みたいで気分がアガる。
早速中を見せてもらう。まずはサウナ室。そんなに大きくないけれど、居心地がよさそうだ。
サウナには欠かせない水風呂。
浴槽は巨大な木の樽だった。日本酒の仕込みに使われる樽らしい。ちなみに旭川は酒造が盛んな街なのだそうだ。
そして、サウナと水風呂に入ったあと休むためのリラックスルーム。
薄暗くて落ち着く。いいな。
湯船はなくて(シャワーはある)、サウナ室と水風呂とリラックスルーム、という必要最小限の構成だ。決して広くはないけれど、居心地がよくて、落ち着く。こういうこぢんまりした感じでいいんだよな。
東京にもこんなサウナが近所の商店街とかにあればいいのに、と思った。
でも、東京だと家賃が高くてお客さんをたくさん集めなくちゃいけないので、小回りが利かないというか、こんな風に小さなサウナを小さく立ち上げるのが難しいのだろう。
早速サウナに入ってみる。
温度は90度。静かで落ち着く。いいサウナだ。
部屋の片隅にあるサウナストーンに、ひしゃくですくった水をかけると、ジュワーという音とともに白樺のよい香りが広がる。
心地よい。これはずっと入っていたいな。
サウナに入るまでは、知らない土地をぶらぶらしている「旅行モード」だったのだけど、サウナに入った途端、普段家の近くでサウナに入るときと同じ、「サウナモード」になってしまった。
おなじみの場所にいるような、いつもと違う場所に来ているような、不思議な気分だ。
まるで家と旭川が、サウナでつながっているようだ。
図で表すと、次のような感じだ。
そして今回は、いつもより深いサウナモードに入れている気がした。
僕はサウナで「現実から離れた世界でいろいろなことを考える」といった、ある種のトリップ感に浸るのだけど、実際の旅(トリップ)でサウナに入ると、いつもより深くサウナモードに没入できている感じがしたのだ。
サウナに入るといつも、人生について考えてしまう。
これから先、何をやっていこうか。
宇宙とは一体何なのだろうか。
そもそも人間はどう生きていくべきなのだろうか。
いろいろ考えたあと、「ポンコツだけどそれでも生きていくしかないよな」という結論に大体落ち着くのだけど。
何回かサウナ、水風呂、リラックスルームを巡回してから上がった。
脱衣所には水、氷、塩が置いてあった。完璧だ。
1階に下りて、カウンターでくつろぐ。
「サウナ後の定番ドリンク」であるオロポ(オロナミンCとポカリスエットを混ぜたもの)を注文する。
銀座サウナは、銀座商店街という商店街のど真ん中にあるので、店の中から商店街の様子を眺めることができて楽しい。サウナと商店街が一体化しているようなゆるい雰囲気を醸し出している。
カウンターでぼーっと過ごしていると、サウナに入りに来た人同士が、
前にあそこのサウナフェスにいませんでしたか。
おお、いましたいました。
あのイベントすごくよかったですよね。
などと交流している様子を見ることができた。中には、遠く離れた北見から訪れているサウナ好きもいた。
すごい、サウナでつながりができている。大人になると知らない人と仲良くなるきっかけが少ないものだけど、サウナという共通の趣味があると、仲良くなりやすいんだな。いいな。
サウナと旅を組み合わせて、「サ旅」と呼んだりするらしい。なかなかいい組み合わせだな、と思う。
旅行なんて、観光とかしなくても、サウナに入ってメシを食うだけでいい。
知らない土地のサウナに入って、そこにいたサウナ―たちと喋ったりできれば、もうそれでいいのだ。
いやー、旭川に来てよかった。
めちゃめちゃ満足して、もうここで帰ってもいいような気持ちになったのだけど、今回はまだまだ行きたい店があるのだった。
銀座サウナ
住所:北海道旭川市3条通14丁目678 電話番号:090-2693-2106 営業時間:12:00〜21:00(LO20:00) 料金:1時間1,000円から 定休日:不定休 毎週水曜日と隔週の日曜日は女性専用
新旧が入り交じる商店街
せっかくなので銀座商店街をぶらぶら歩いてみることにした。
歩き始めて、まず目を奪われたのが三番舘という建物だ。
衣類を売っている3階建てのデパートみたいな店なのだけど、異常に阪神タイガースを推している。
入り口に「あかん! 優勝してまう!」と書いてある。
なんだこれは……。
僕は大阪の出身なのだけど、関西でもここまでトラキチな店は少ない。なぜこんな北の大地に。
店の中もトラだらけだった。すごい。こういう予測不能なことがあるから旅は面白い。
三番舘の隣には第一市場という、古くからある市場があった。
残念ながら閉まっている店が多かったのだけど、昔の旭川の様子を伝える写真が展示してあった。
過去の歴史を今に伝える建物がありつつ、銀座サウナのように若い人たちが作った新しい施設もある。銀座商店街はそんな新と旧が同居しているところが、いいなと思った。
三番舘 旭川本店
住所:北海道旭川市3条通15丁目右1号 電話番号:0166-24-1311 営業時間:10:00〜18:30 定休日:不定休
旅行中に本屋へ行くのが好きだ
銀座商店街から市内の中心部に向けてぶらぶらと歩いていく。
10月の旭川はちょっと涼しめだけど、天気がいいのでそんなに寒くはない。東京だと11月くらいの気温だろうか。
歩いている途中、本屋にちょっと寄ってみた。僕は旅行中、本屋に行くのが好きなのだ。
前に那覇へ行った時にも思ったけど、旅先にジュンク堂があると、「ここに知の全てがある……」みたいな気持ちになって安心できる。
地元の書店で見つけても買わなかった本が、旅先でなぜか急に読みたくなったりする。本は読む気分が盛り上がったときに買うのが一番面白く読める、ということで、三冊も買ってしまった。荷物になるのに……。
ジュンク堂書店 旭川店
住所:北海道旭川市1条通8丁目108番地 フィール旭川5階 電話番号:0166-26-1120 営業時間:10:00〜19:30 定休日:12月は無休
一人で居酒屋に入る勇気
歩き回っているうちにお腹が空いて来たので、そろそろ晩ごはんを食べようと思う。目当ての店、独酌 三四郎に着いたのは夜の6時ごろ。『孤独のグルメ』で井之頭五郎が訪れた店だ。
ドラマだと、外の寒さに耐えかねてこの店に入る、という展開だったのだけど、それにしても五郎ちゃんは、酒も飲めないのによく「独酌」なんて名前の店に入ったよな、と思う。
五郎ちゃんほど下戸ではないけれど、僕もあまりお酒を飲まないので、ドラマを見ていなかったら、一人でこの店には入らなかっただろう。
こういうお店に入るなら、何杯もお酒を注文したり、店の人に「いい地酒ある?」とか聞いたりしなければいけないのでは、と思ってしまうのだ。
考え過ぎだろうけど、周りの人に「居酒屋で酒も飲まずに一人でメシを食ってる変な奴」とか思われるんじゃないか、と恐れて、ちょっと腰が引けてしまう。
だけど、「そんなことは気にしなくていい」と我々に教えてくれたのが『孤独のグルメ』という作品だった。
居酒屋で堂々と、一杯目からお茶を頼んでもいい。
ごはんと汁物と漬け物がテーブルにそろえば、全ての酒の肴が定食として立ち上がってくる。それを身をもって示してくれたのが、井之頭五郎だった。
五郎ちゃんに背中を押してもらう気持ちで、思い切って入店した。
店内は年季の入ったいい雰囲気だ。二階の座敷へと案内される。なんだか旅館のような感じだ。
手書きのメニューがいい。これは店の主人が自分で書いているらしい。と、『孤独のグルメ』では説明されていた。
さあ、何を頼もう。この旭川の「歴史ある名城」をどう攻め落とすべきか。
とりあえず旭川名物らしい、新子焼きを頼んでみよう。飯寿司にも興味を惹かれる。そしてごはんときのこ汁と漬け物を調達して、定食を錬成する。五郎ちゃんが食べていた玉子焼きも加えてみるか。もちろん、北海道名物の温かいとうきび茶(コーンのお茶)も。
攻守のバランスがよい、完璧な布陣ではないだろうか。
しばらく待っていると、料理が運ばれてきた。
新子焼きというのは、炭火でじっくり焼いた若鶏のもも肉に、甘いタレをつけた料理らしい。皮がパリパリして、身はジューシー。焼き方がすごくいいんだな。さすが炭火。
飯寿司もサッパリしていておいしい。
きのこ汁は何種類ものきのこがたっぷり入っていたし、玉子焼きもおいしかった。
全てが完璧だった。申し分ない。大勝利だ。
ちょっと食べ過ぎだった気もするけれど、旅行中なのでいいことにしよう。
『孤独のグルメ』のおかげで、普段は入らないような素晴らしい店に入ることができた。
満足して店を出た。
独酌 三四郎
住所:北海道旭川市2条通5丁目左7号 電話番号:0166-22-6751 営業時間:17:00〜22:00(LO21:30) 定休日:日曜日、祝日、年末年始(今年は12/29〜1/4まで)。2022年1月からは日曜日、月曜日、祝日、年末年始 新子焼きは950円(税抜き)
おしゃれなホテルのレトロなサウナ
あとは宿にチェックインして寝るだけだ。今回泊まる「OMO7旭川 by 星野リゾート」は2018年にリブランドオープンしたばかりのホテルだ。
めちゃめちゃ雰囲気のいい外観だ。
そして、建物の中もすごく賑やかだった。
泊まった部屋はこんな感じ。
内装もかわいいし、窓から見える旭川の夜景も綺麗だ。申し分ないな。
余談だが、僕は旅先でできるだけ大浴場つきの宿を選ぶようにしている。部屋備え付きの狭い風呂なんてなくていい。大浴場があればそれでいい。
そしてOMO7旭川みたいに、「宿泊者は併設されているスパに入り放題」というのが一番うれしい。
その分、宿泊費がちょっと高くなっても、2回か3回入ったりするので十分元が取れる。
部屋に荷物を置いて一息ついたら、いよいよサウナを攻めるとしよう。
ホテル併設のサウナ・プラトー。ここは『サ道』で取り上げられたサウナなのだ。
OMO7旭川はとても今風なデザインのホテルなのだけど、プラトーはガラッと雰囲気が変わって、昭和の頃からあるオーソドックスなサウナ、といった感じだ。
その理由は、OMO7旭川になる前のホテルにあったスパをOMO7旭川が引き継いでそのまま運営しているからなのだ。と、『サ道』の中で説明されていた。
館内着を着ると落ち着く。
館内着、世界で一番好きな服だと思う。館内着が正装になる世界に行きたい。
昔ながらの雰囲気が落ち着く。
サウナガチ勢の中には、「湯船なんか入らん、サウナと水風呂があればいい」と主張する人もいるけど、僕は軟弱なので、ゆるく浸かれる湯船もあるとうれしい。
風呂というにはちょっとぬるいお湯が入ってる、だだっ広いウォーキングバスがあった。いい。
こういうのって昔ながらの健康ランドにはよくあるけど、最近の施設ではあまり見ない。
このウォーキングバスを、歩き回ったりふわふわと漂ったりした。
楽しい。僕はずっとぬるいお湯に入りたかったのかもしれない。
ぬるいお湯の中を曖昧にふらふら動き回るのが好きなんだよな。
ジムのプールだと泳がなきゃいけないから、こういうのがちょうどいいのだ。
ある程度お湯に浸かったら、いよいよサウナに入ろう。ちなみにサウナはドライサウナとミストサウナの2種類があった。
ドライサウナ室は広々としている。温度は93度。落ち着ける感じだ。
そして水風呂も広くていい感じ。
プールの上の中二階みたいなところに、椅子が置いてあって休憩スペースになっている。
サウナに入って、水風呂に入って、休憩する。
それを何度も繰り返していると、また昼間と同じように、精神がサウナ界へと入ってしまった。
人生、宇宙、人間……。
我々は何のために生まれてきたのか。
いろいろと面倒くさいけど、それでも生きていかないといけないんだよな。
東京に戻ったら、先送りにしていたことを、片付けていこう……。
風呂上がりに一階のロビーへ。ロビーのブックトンネルには、旭川ゆかりの本がたくさん置かれている。寝るちょっと前まで、ジュンク堂で買った本やトンネルに置かれていた本をここで読んだ。明日も楽しみだ。
サウナ・プラトー
営業時間:15:30〜24:00(最終受付23:30) 料金:無料 定休日:年中無休 宿泊者のみ利用可
OMO7旭川 by 星野リゾート
住所:北海道旭川市6条通9丁目 電話番号:0166‐29‐2666(宿泊予約)
巨人の国を歩いているようだった
起床。今日も昨日に引き続き天気がよさそうだ。
OMO7旭川で朝食ビュッフェを食べる。ローストビーフ山わさびごはんとワッフルが売りらしく、どちらもおいしい。
ビュッフェってつい食べ過ぎてしまうな。
ホテルをチェックアウトしたあとは、天気もいいので街をぶらぶら歩いてみることにした。
いったん旭川駅へ出て、駅前から伸びる平和通買物公園を北へ歩いてみることにしよう。
旭川の駅はめちゃめちゃ大きかった。
駅直結の大きなイオンモールがあって超便利そうだ。
駅前の広場もめちゃめちゃ広い。
平和通買物公園も、道が広くて歩きやすい。
道も広くて、人もそんなに多くないので、空間にすごく余裕がある。空がとても広い。
どこに行っても狭いスペースに大量の人が詰まっている東京と比べると、縮尺がバグるというか、なんだか巨人の国に迷い込んだような不思議な気持ちになる。
気持ちがいいな。これを体験してしまうと、東京の人の多さにウンザリしそうだ……。
平和通買物公園を抜けて北へずっと歩くと、石狩川が見えてきた。
天気がよくて気持ちいい。石狩川にかかる旭橋は、「北海道三大名橋」と呼ばれているらしい。
確かにカッコいいデザインだ。メニョオとした鉄骨感がいい。
せっかくなので、橋の上を歩いて向こう岸まで渡ってみよう。
どの角度から見ても、鉄骨感がグギャン! とした感じだ。いい橋だな。
オールドスクールな銭湯で「ととのい」の意味を知る
さて、そろそろ締めのサウナに向かうとしよう。
フタバ湯は、旭川の中心部からちょっと離れているけれど、道内外から多くのサウナ好きが訪れるそうだ。
昨日の銀座サウナともプラトーとも雰囲気が違って、オーソドックスな銭湯、という感じだ。店内にはゆるく演歌が流れている。
早速サウナに入らせてもらう。
温度は82度。ほうじ茶のロウリュが名物らしい。
サウナストーンにひしゃくでほうじ茶を一杯かけて、後から水を一杯かける。すると、お茶を焙じた香ばしい匂いがサウナ室いっぱいに広がる。お茶屋さんの店先でよく嗅ぐ匂いだ。とてもいいな……。
そして水風呂。地下150mから汲み上げた天然水を使っているらしい。
入った瞬間、これは全然違う、と思った。
昔は、水風呂の水質なんてどれでも同じだ、と思っていた。だけど、これは明らかに違う「体験」だった。
水が肌にしっとりと吸いつくような感じがして、とても気持ちいい。何時間でも入っていたくなる。これが天然水の力か。
そして休憩椅子でくつろぐ。最高だな……。
サウナ好きの間では、サウナに入ったあと訪れる気持ちいい状態のことを「ととのう」と呼ぶのだけど、僕はここで初めて「ととのう」の意味が分かった気がした。
僕としては、サウナ後の状態は、「ととのう」というのとはちょっと違って「ぶっ飛ぶ」みたいな表現がしっくり来る、と思っていた。現実から吹っ飛ばされた異空間で、宇宙や人生のことを考える、という感じだ。
だけど、フタバ湯のサウナに入ったあとは、宇宙や人生のことではなく、もっと社会的なことを考える気分になっていた。
やっぱり人間関係をちゃんとやっていくのは大切だ。
人間は浪花節で動いてるんだからな。
誠実に正しく生きよう。
そんな、わりとまっとうなことをずっと考えていたのだ。
これは「ととのう」という表現にぴったりした感じがした。
そんな体験になったのは、このオールドスクールな銭湯のたたずまいや、店内に流れていた演歌のせいかもしれない。
サウナは場所や環境次第で、全然違う体験になる。
そのことを、今回3つのサウナに入って実感した。
せっかくなので、店主の加地経郎さんにお話を伺ってみた。
加地さんは昔からここで銭湯を営んでいるのだけど、サウナが人気になり始めたのはごく最近のことだそうだ。
「サウナは詳しくないんだけど、常連の人たちが、ロウリュはこんなふうにしたらいい、とか、備え付けのテレビはないほうがいい、とかアドバイスしてくれるので、その通りにしたらいろんな人が来てくれるようになった」と語っていたのが面白かった。
そうやっていろんな人の意見が集まるのは、加地さんのおおらかな人柄のおかげなんだろう。
フタバ湯
住所:北海道旭川市春光7条5丁目22 電話番号:0166-53-4055 料金:入浴料450円+サウナ50円 営業時間:13:00〜23:00 定休日:月曜日
確実においしいもので腹を満たしてくる店
フタバ湯を出て、市内の中心部に戻る。今度は自由軒という定食屋さんへ。ここも昨日の独酌 三四郎と同じく、『孤独のグルメ』に登場した店だ。
のれんには「豚肉料理 とんかつ」とあるけれど、ビーフシチューやグラタンなど、洋食のメニューも多い。
とにかくガッツリとおいしいものを食べさせるぞ、という意気込みが感じられる店だ。
何を頼もうか。やはりドラマに出てきたメニューがいいかな。
そんなことを考えながら店の中を見渡すと、店内の黒板に井之頭五郎が頼んだメニューを再現した「五郎セット」があるのを見つけた。カニクリームコロッケとホッケフライ。これを頼むしかないだろう。
この自由軒の名物はラーメン鉢で出てくる巨大な味噌汁だ。味噌汁とごはんだけのセット、というのもある。
味噌汁のメインの具は分厚い豚肉。ちくわの薄切りと半熟卵も入っている。
しっかりした味つけがサウナ後の胃に染みる。これは確かに、味噌汁とごはんだけで十分、一食になる。
しかし今回は、ホッケフライとカニクリームコロッケもついてくるのだ。
ちょっと戦力が過剰過ぎたか。でも、まあいいか。旅行中だし。
ホッケフライは、さっぱりサクサクしててとてもおいしい。
そしてカニクリームコロッケ。これがめちゃめちゃおいしかった。カニクリームコロッケって、本気で作るとこんなにおいしくなるんだな……。
いい店だな。おいしいもので確実にお腹を満たしてくる。ハズレがない。
店内には『孤独のグルメ』のロケ時の写真も飾ってあった。
それを見て気づいたのだけど、ドラマに出てきた店主の人と、実際の店主の人の雰囲気がかなり似ている。
そういえば、「店を知ってる人にニヤリとしてもらえるように、似た雰囲気の役者さんをキャスティングしている」という裏話をどこかで読んだのを思い出した。
自由軒
住所:北海道旭川市5条通8丁目左2号 電話番号:0166-23-8686 営業時間:11:30~14:00、17:30~21:00 定休日:日曜日 五郎セットは1,730円(税込)
静かな気持ちを思い出すために
こうして一泊二日の旅程を終えたわけだけど、振り返るとあっという間だった。人生や宇宙や社会のことを考えながら、心とお腹を「ととのえられた」2日間だった。
旭川駅の売店でお土産を買ってから、空港に向かうバスへと乗り込む。
もう旭川を離れてしまうのか。
いいところだったし、帰りたくないな。
出会った人たちもいい人ばかりだった。
またここに来るのはいつになるだろうか。ひょっとしたらもう一生来ないかもしれない。
そんなことを考えると、もっとここにいたい、という気持ちになる。
でも、いい体験ができたのは、一泊二日という限られた日数の旅だからなのかもしれない。
これから僕はまた、あのごみごみした東京に戻るのだ。
最初は人の多さに、うへっ、と思うだろうけど、一日もしたらすぐに慣れてしまうんだろう。
でもときどき、旭川で一人味わった静かな気持ちを思い出すために、またふらっと一人で旅に出るようにしたい。
今回は、サウナに入ってメシを食うだけ、という旅だったけれど、とても満足した。
そもそも温泉旅行というのは温泉に入ってご飯を食べるだけだし、そのサウナ版としての「サ旅」はアリだな、と思った。
またどこか別の土地で「サ旅」をしてみたい。
旅行なんて、別に特別なことをしなくても、風呂に入って、散歩して、メシを食うだけでいい。
みなさんもぜひ、一人旅を楽しんでみてください。
※サウナの内部は店舗の許可を得て撮影しています
書いた人:pha
1978年大阪府生まれ。京都大学総合人間学部を卒業後、大学職員として就職するも3年で退職し、そこからは定職につかずふらふらと暮らしている。著書として『どこでもいいからどこかへ行きたい』(幻冬舎)、『しないことリスト』(大和書房)などがある。近刊は『人生の土台となる読書』(ダイヤモンド社)。
Twitter:@pha
ブログ:phaの日記
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編集:はてな編集部
※2021年11月25日10:00ごろ、記事の一部を修正しました。
※2021年12月8日12:45ごろ、記事の一部を修正しました。