Yorimichi Airdo旅のよりみちをお手伝い

北海道・ニセコの温泉に入って、地元の食材を使ったクラフトビール「ニセコビール」を飲む旅


Yorimichi AIRDOをご覧の皆さまこんにちは! ほそいあやと申します。普段は文章を書いたり酒を飲んだりしております。

北海道に行くなら何がしたいか。そう問われてまず思い浮かべたのが「ビール」でした。

クラフトビールの飲み歩きが趣味なのですが、中でも北海道の「ニセコビール」は、本州ではめったにお目にかかれないレア物でございます。

憧れのビールを、自然あふれる北海道の広大な大地でぐびっと飲みたい……。そんな欲求に突き動かされてニセコへ向いました。


東京・羽田空港からAIRDOの飛行機に乗って新千歳空港へ。そこから乗車したニセコ行きバスの車窓は、ほぼ山道。木々の向こうに支笏湖(しこつこ)を望みながら走り続けると、視界がひらけてきてニセコの街に近づいたことがわかります。すると見えてくるのが羊蹄山(ようていざん)。遮るものもなくどこからでもよく見える、フォトジェニックな山です。


ニセコの空気は澄んでいて、東京よりずっと空が青いです(そりゃそうか)。

それにしても、いいお天気。

ニセコに来るのは二回目で、一回目は高校の修学旅行でした。スキーの講習中にチームとはぐれて吹雪のゲレンデを絶望的な気持ちでさまよったというろくでもない思い出しかなかったのですが、今回はよい旅になりそうです!!

ビールの前に温泉へ。昆布の味がする!? 昆布温泉郷「鯉川温泉」


まず向かったのが、ニセコアンヌプリ(ニセコアンヌプリ:ニセコ積丹小樽海岸国定公園内にある活火山)の西側に位置する、昆布温泉郷「鯉川温泉」です。温泉で旅の疲れを癒やしてから飲むビールは、より一層おいしいに違いない!


さて「海もないのになぜ昆布温泉?」かというと、昆布は地名だそうで、昆布駅という駅もあります。

きっとこのあたりでは、「昆布駅で電車に乗ろうとしたら、海藻(回送)電車でさ~」なんていうギャグが横行しているに違いないと思います。


では「なぜ鯉川温泉?」かといいますと……


脇のお池に鯉がたくさん泳いでいたからだそうです! ロマンチック~。


2017年の3月までは旅館もやっていましたが、今は日帰り入浴のみとなっています。

いやしかし、レトロな佇まいですのう。


※今回特別に許可を得て撮影しました

まずは内湯から。秘境の温泉に来たなあと思わせる雰囲気がめっちゃいい!

この独特なグリーンのお湯は、その名の通り昆布を思わせますね。
見た目がそっくりだけど、昆布茶ってことはないだろうか。


「ナトリウムー塩化物・炭酸水素温泉」の食塩泉だそうで、なめてみるとほのかにしょっぱいです。匂いはちょっと鉄の香り。泉温は65.8℃なので加水をしています。

昆布茶の味はしませんでしたが、あったまりそ~~。


そして露天! 自然と一体型タイプだ! サイコーの助!!!

同行の友人(ニセコ出身)いわく「冬の雪見風呂もいいぜ」とのことでした。だろうな~。


というわけで、いい湯だった! すごくあったまる温泉なので、冬にも来たいなあ~。


出発する準備をしていると目の前に「温泉たまご」の文字が。
聞けば鯉川温泉の名物だそうで、白身よりも黄身のほうが固いのが特徴とのこと。


心なしか温泉の色に染まっているように見えます。これは気になる。
よし、今夜はニセコビールと一緒にこの温泉たまごをいただこう。


温泉でひと汗かき、今宵の肴もGETし、ニセコビールを楽しむ準備は万端!
大満足の鯉川温泉をあとにして、いよいよ憧れのビールを飲みに車を走らせます(運転は友人だけど)。

鯉川温泉
住所:北海道磯谷郡蘭越町字湯里592
電話:0136-58-2111
営業時間:10:30~20:00(清掃時間、清掃日あり)
定休日:不定休

大自然の中で飲むニセコビールは、やっぱりうまかった!


さて、最高の温泉を堪能したあとは最高のニセコビールの醸造所「ニセコ ブルワリー」へ向かいます。


友人:これがニセコのランドマーク、ニセコ大橋ですよ。

ほそい:ほほう(ビール♪ ビール♪)


で、着きました!


わーい、憧れのニセコビール!


ニセコちょうしょ……!?


ほそい:商工会館って書いてあるけど。

友人:ここで合ってます。


ほんとだ、中は正真正銘のブルワリーだ……! 激渋の建物の中にこんな非日常空間があるなんて萌える~~。


二階はレストラン。

ちょっと外からは想像できない(失礼)、めっちゃくちゃお洒落空間なんですけど。


運転で飲めなくて不満そうな酒豪の友人ごしに、キラキラとしたニセコ連峰の山々が見えます。こんなロケーションでビールが飲めるのかニセコビールさん。

都内のクラフトビール屋さんの窓の外はたいてい灰色なので(それも好きだけど)、恐ろしいほど開放的な気分になってしまうよ。


ニセコ ブルワリーの代表である、櫻井繁さん。会社を立ち上げるまでの話をお聞きしました。


ほそい:始めたきっかけはなんだったんですか。

櫻井さん:もともとは東京出身で会社員だったんですが、ある時北海道に転勤になったことを機に、こっちの土地の魅力に気付いてしまって。

ほそい:それで北海道に永住を決めたんですか。転勤って、帰りたくなるものだと思ってました。しかもそのあとにビールづくりを始めるという映画のような展開が……。

櫻井さん:ある時このニセコビールという商品をつくっていた方が会社をたたまれることを知りまして。「地域の名前の付いた商品をどうにか再興させたい」という思いから、ビール醸造技術などを学び、醸造設備をそろえ、酒造免許を取得して新たにニセコビールの会社を起こしました。


櫻井さん:資金も少なかったので、建物は商工会館を貸していただき、お店の内装もスタッフと一緒にやりました。

ほそい:そうだったんですね。ここまでやってしまうとは。すごい!


華やかなラベルのボトルビールたち。このラベルも櫻井さんたちのデザインです。

左から撫子(ロゼビール)、向日葵(ベルジャンエール)、残照(ペールエール)、山吹(ピルスナー)、深雪(IPA)、蝦夷(ポーター)

どれも他の地域ではなかなか売られていません。生ともなると飲める店は希少です。

全部濃くておいしいけど、ピルスナーの山吹が、一般的なすっきりとした飲み心地のピルスナーとはまるで別物で、ホップの香りと苦味をちゃんと感じる飲みごたえなんですわ。マイベストピルスナーは山吹です。

そんなちょっと珍しいニセコビール。私がファンになったきっかけは「蝦夷」でした


数年前、今回一緒に来ている友人に「しいたけポーターです」とボトルを渡されました。

しいたけポーター? そのちょっとまぬけな響きは何だろう。頭の中がハテナのまま、ひと口飲んでみると「しいたけポーターや! おいしい、おいしい、おいしいたけ!!」ってなりまして。それ以降ニセコビールのファンなわけです。しいたけ味のビールなんてこの世にあると思いませんでしたから。


櫻井さん:ブルワリーを始めるにあたって研修をさせていただいた山梨のビール醸造所「アウトサイダーブルーイング」の丹羽さんと話していた時に、何か北海道ならではのビールをつくりたいという話になりました。でもフルーツを使おうにもニセコにはこれといったフルーツはない。どうしようかと考えあぐねていたら、アウトサイダーにはマッシュルームポーターというのがあって。

ほそい:なるほど。マッシュルームからヒントを得た、と。

櫻井さん:はい、そうです。北海道らしい食材である「鮭節」と「昆布」と「しいたけ」、これらの“旨み”を使っておいしいポーターをつくってみようということになったんです。結果、和食に合うビールが出来ました。ポーターは濃いけど蝦夷は飲みやすくて人気です。

ほそい:この話を聞けただけでもはるばる来た甲斐がありました。


ほそい:お客さんの反応はいかがですか。

櫻井さん:地元の人より、はるばる遠くから来るビールファンが多いです。冬は冬で、9割が欧米人です。

ほそい:言われてみれば確かに、ですね。私もそうですし。ニセコでビールを始めてよかったなと思うポイントはありますか。

櫻井さん:水ですね。ニセコは水が違います。このあたりはニセコアンヌプリの水と羊蹄の水があって、ここで使用しているのは羊蹄の水なんです。とてもおいしい水で、恩恵としか言いようがないです。

ほそい:ニセコに来て驚いたことは水道水がすごくおいしいことだったので、よくわかります。


ほそい:今後ビールをつくるにあたり、やってみたいことはありますか。

櫻井さん:自分たちでホップを育てたいですね。あと、あまり知られていない地元のフルーツも使ってみたい。いろんなお酒の勉強をしながら試行錯誤していきたいですね。クラフトビールにワイン酵母を使ってみるとか。

ほそい:めっちゃ楽しみです、それ! どんな味になるのだろう?? 好きなことを日々研究するのって楽しそうですが、きっと楽しいことばかりではないですよね……。苦労していることってありますか。

櫻井さん:厳冬期の発酵時に温度が下がらないようにすることですね。酵母が悲鳴をあげないように工夫するのが大変です。

ほそい:なるほど北の大地。


櫻井さん:あと、栓をするのもラベルを貼るのも、工場担当の者が全部一人でやってくれているので……

ほそい:えっ!? それは確かに大変……! これからニセコビールのボトルを手にしたら、その姿を思い浮かべて感謝しながら飲むことにします。


醸造用のタンクは1つ300Lで、ボトルだと600本ちょっとの分だそうです。
下の工場直送の出来たてビールが飲めるってやっぱりいいなあ。はあ〜〜ビール天国♡ ここに住みたい。


さて、お待ちかねのドリンクタイム。
左から蝦夷(ポーター)、残照(ペールエール)、向日葵(ベルジャンエール)、山吹(ピルスナー)

すごく奇麗なグラデーションですね。味の濃いクラフトビールは秋にぴったりだと思っているのですが、紅葉に似ているのもあるのかもしれません。


それでは、いただいちゃいます!!!



サイコーー〜〜!

ニセコの山並みを見ながら飲む蝦夷はひとあじ違うぜ。この旨味も全て北海道の恵みなのだ。俺にとって北海道の飲み物といえばもはや牛乳ではなくビールかもしれない。


友人がしきりに悔しがっていたけど、あとでこの写真を見て思った。こんな目で見てごめん。


レストランには、ビールに合うおつまみもそろっています。
牛ヒレのローストは、北海道の牛を絶妙な火加減でローストしたレアステーキ。はい、この見た目通りのおいしさです。

フライドガーリックとネギのきいたソースもめちゃんこうまい!


牛ヒレとあわせて、今回、向日葵(ベルジャンエール)のドラフトをはじめて飲んでみました。普通のベルジャンエールよりコリアンダーシードのパンチがきいていてすごく風味豊かなんですね。これを買って帰りたい! しかし品切れとのことでショック。


ただでさえレアなニセコビールですが、中でもこの白いラベルが目印のロゼビールは超レア物。飲めたらすごいやつ。残念ながらこの日レストランには空き瓶だけありました。


櫻井さん:あ、いま札幌でやってる「さっぽろオクトーバーフェスト2017」に出してますよ。
(※さっぽろオクトーバーフェスト:「北海道・札幌の食」をテーマに道内各地の旬の食材やお酒が集まる祭典。2017年の開催は終了)

ほそい:行きます。


以上、ニセコビールブルワリー&レストランでした。ますますニセコビールのファンになりました! 

ニセコ ブルワリー
住所:北海道虻田郡 ニセコ町字本通4番地11
電話:0136-55-5664
営業時間:[レストラン]17:00~22:30
定休日:不定休

宿舎で本日の収穫を肴に晩酌。翌日は超レア物を求めて……


今夜は、ニセコビールと鯉川温泉の温泉たまごで晩酌といきましょう。


本当に、黄身がしっとりと固い。でも固ゆでではないんです。何だろう、カラスミのような舌触りで、たまごのおいしさを超えている。こいつはとんだ珍味だ!


「昆布温泉とニセコビールは最の高」そんな一日となりました。


翌日は札幌にアレを探しに来ましたよ。
向かった先は櫻井さんの言ってたオクトーバーフェストです。


がーーーーーーーん


トトト……トリトン(北海道の有名回転寿司屋)で寿司食ってる間に売れちゃった?

スーパーレアビール、なめちゃあかんかったな。


ロゼビールにはありつけなかったけど、めちゃくちゃ楽しい旅でした。

キツネを見つけて大騒ぎで写真を撮り、帰りは六花亭のチョコを山ほど買う典型的逆おのぼりさんの旅が無事終わり、ほっとしております。


近い将来また、温泉たまごをつまみにビールを飲むためだけにニセコに行きたいと思います。


書いた人:ほそいあや(id:posoi)

1975年生まれ。猫好き。「ゆる猫生活」(玄光社)発売中。
人生においての目標は食べたことのないものをひとつでも多く食べること。旅先ではまだ見ぬ珍味に出会うため目を光らせている。
個人サイト 晴天4号 / Twitter @hosoi

編集:はてな編集部