ライターのカツセマサヒコです。
「うまいもの食ってるだけじゃねえか、仕事しろ」と評判のAIRDO旅行記、今回は旭川編をお届けします。
皆さんは、旭川市にどんなイメージがありますか?
僕の中では、「土地の7割は旭山動物園、人口の半分は動物園スタッフ」という感じだったのですが、旭川が大好きなAIRDOの山田さんに伝えてみたところ、以下のような反応がありました。
「はぁ?(怒)」
旭川とか遊べるところ多いですから! 東京出身だからって北海道を徹底的に上から見るのやめてください!
すごい責められ方だ。
旭川の観光課の方をアサインしておきますから、しっかり勉強してきてくださいね!
と、いうことで、旭川市は本当に旭山動物園を除いても楽しいところなのか、実態を確認するために、AIRDO 81便に乗って旭川へと向かいました(羽田空港を6:45に出ているので超眠いです)。
空港で待ってくれていたのは、旭川市経済観光部観光課の原田さん(左)と、小松さん(右)。2日間アテンドしてくれます。
よろしくお願いしますー!
よろしくお願いします! 2日間しっかりご案内します!
Apple信者の聖地「青い池」
小松さんの運転する車に乗ると、さっそく旭川観光を開始。街灯も標識も信号もない道を進んで、美瑛町(びえいちょう)にある「青い池」を目指します。
駐車場に止めて、階段を下りていくと……
あった! 青い池に到着!!
すげー! 本当に青い!!
ここはApple信者の聖地と言われているんですよ。
え、なんで旭川にAppleが関係してるんですか?
Appleが2012年に発表した「OS X Mountain Lion」の公式壁紙に、この青い池が使われているからだそうです。「MacBook Pro Retina」のディスプレイモデルのプロモーションにも使われたそうですよ。
あのAppleが起用したってすごい!(そして壁紙になったからと言って現地まで足を運んでしまうApple信者もっとすごい)
そもそもなんですけど、青い池って、どうして青いんですか?
1988年に、十勝岳が噴火したことがきっかけになっています。火山災害から街を守るため、コンクリートブロックでできた「えん堤」が作られました。そこに水が溜まってできたのが、この「青い池」なんです。
じゃあこれ、人工物ってことですか?
そうですね。この池の水中には「コロイド粒子」と呼ばれる粒子が含まれているのですが、それが太陽の光と衝突すると光の散乱を促して、波長の短い青色が目に写りやすくなるため、錯覚を起こして、青く見えてしまうのだそうです。
よくわかんないけど、錯覚で青く見えてるってことですよね。
最後のところしか伝わってないですね、それ。
ちなみに青い池の近くには「しらひげの滝」と呼ばれる滝があり、これを遥か上空から眺めることもできるので、こちらも併せて見るのがオススメ。すごい迫力だった。
ほぼ一年中花が咲き、アルパカまで見られちゃう「四季彩の丘」
青い池を後にしてまた車で移動していくと、「展望花畑 四季彩の丘」に到着。写真にはまだ植え始めたばかりのところも写っていますが、15ヘクタールの広大な土地に、春~秋にかけてずっと花が見られるのが魅力。
こんな景色、延々と見られます。
また、何故かアルパカ牧場も併設されているので、あのモッフモフに触りたくなったらここに立ち寄るのがちょうどいい。
モッフモフー。
餌付けもできますけど、やってみますか?
お、本当ですか? もう30歳になるんですけど、いろいろと大丈夫ですか?
カツセさんは、どっちかっていうとアルパカ顔だから大丈夫だと思います。
何が大丈夫なんですか、それ。
黒アルパカがやたらとフレンドリーに接してきたが、勘違いされた気がしなくもない。
ちなみに昼食は四季彩の丘から移動して、美瑛市街から北西の丘すぐにある「Owl’s café(アウルズカフェ)」にお邪魔しました。
ここのオムライスはトロットロでめちゃくちゃおいしいのでオススメです。美瑛の広大な景色を楽しみながら、地元の食材を使った料理が食べられるので、「北海道来たー!」っていう感覚をじゅうぶんに楽しめます。
『北の国から』のロケ地「ファーム富田」
次にやってきたのは、ラベンダー畑で有名な「ファーム富田」。後ろに生えているのが全部ラベンダーです。開花したら相当きれいだろうな。※撮影時は開花前でした。
画像引用元:http://www.farm-tomita.co.jp/farm/
「四季彩の丘」と同様、とにかく広い敷地に、ラベンダーを中心としたさまざまな花が咲いているのが特徴。
スタッフの原田さんにお話を伺ってみました。
8月上旬までが見ごろということで、すごい賑わっていますけど、ラベンダー畑としての「ファーム富田」さんの歴史は長いんですか?
1958年に創業者の富田忠雄が、農業の傍らで栽培を始めたのがきっかけになっています。今が2016年だから……もう60年近い歴史になりますね。
60年かあ……想像もつかないですね……。
ラベンダーは蒸留してオイルにすることでお金になるのですが、外国産のラベンダーが入ってくることで国産ラベンダーは窮地に陥りました。なんとか栽培を続ける方法はないかと頭を悩ましていたころ、ここのラベンダー畑の写真が、国鉄のカレンダーに使われたんです。
カレンダー?
そうです。それまでは全国区に知られることはなかったファーム富田でしたが、国鉄カレンダーが全国に広がると、あっという間に観光地として、多くの人が集まるようになったんですよ。
画像引用元:http://www.farm-tomita.co.jp/history/
この写真がカレンダーに使われて以降、観光客が来るようになったという。
すごい幸運だったんですね。
でも、観光だけではやはり運営を続けるのは難しいんですよ。
確かに。見るだけだったら無料ですもんね。
そこで次に目をつけたのが、ラベンダーの香りを活かした香水や石けん作りです。
なるほどー。ラベンダー畑を見る人なら好きそうですもんね。
そうですね。そこでようやく軌道に乗って、稲作などはやめて、ラベンダーやハーブの栽培・加工に専念することができたんです。
一筋縄ではいかない歴史があったんですね……。ただキレイに咲いてるだけじゃうまくいかないってことなんだろうな……。
入り口から一番遠いところにあるのが、最初にラベンダーが植えられた「トラディショナルラベンダー畑」。ちょうどこの畑の真ん中あたりで、『北の国から』のロケも行われたらしい。満開になったら絶対にきれいだっただろうな。
結婚式やりたいとしか思えない「雪の美術館」
ラベンダー畑を後にして、またしばらく車で移動したところ、到着したのは「雪の美術館」。 北海道なんていくらでも雪が降るだろうから、あえて雪にフォーカスしなくても……と思ったのですが、「見どころがありすぎる」というので来てみました。
入り口をくぐって、地下18メートルまで続く大きな螺旋階段を降りると……
窓の向こうは、氷の世界!室内は10度程度ですが、窓の向こうはマイナス15度の極寒。
これ、完全に「リアル・アナと雪の女王」って感じじゃないですか。
本当ですね。
エルサのコスプレイヤーとか普通にいそうですよね。
実際、撮影会で使われる方もいるらしいですよ。
やっぱりそういう用途もあるんだ。
氷の廊下を抜けると、今度は雪の結晶のかたちを集めた小ホール。「絶対ここにエルサいたでしょ」と誰もがツッコミたくなるような美しさ。
そして最深部には、200名収容の音楽堂!
白のグランドピアノやハープまで設置されていて、どこまでもフォトジェニック。
音楽堂の横にはレストランも併設されていて、フルコースまで対応。本当にここで結婚式も挙げることができるようです。出席してみたい。こんなところで挙式している友人がいたらカッコよすぎる。
地元民に愛される『いろいろと最強なお店』「馬場ホルモン」
雪の美術館を出て、時間は夕暮れ時に。たどり着いたのは、本日の夕飯処「馬場ホルモン」。
ここまで「きれい! 自然がいっぱい!」って感じの印象が続きましたよね?
そうですね、「うわーフォトジェニックー! インスタグラムにアップしたいー!」ってばっかり思ってました。
でも旭川はそれだけじゃないってところを見せたいので、今回はこちらのお店をセレクトしてみました。
うん、インスタにハマってそうなパンケーキ女子が一斉に逃げ出しそうな雰囲気が最高。こういう店に行きたかった。
店内に入ると、いかにもウェーイ系な雰囲気の大学生の集団(15名くらい)がめちゃくちゃ行儀よく静かに食べていて不気味でした。
なんでウェーイ系大学生があんなに行儀よく食べてるんですか……?
まあ、空気を読んだ、ってことでしょうね。
そんなに怖いところなの、ここ?
テーブルに着いたらすぐに、ホルモンとタマネギが運ばれてくる。
あれ? 料理も頼んでおいてくれたんですか?
ああ、自動的に出てくるんですよ。
え! これ、「お通し」ってこと?
いえ、これしかないんです。
「…………?」
どういうことですか?
はい。ですから、メニューが、これしかないんです。
そんなことってある……?
本当にこの店、タマネギとホルモンだけしかメニューがないのです。勝負しすぎ。でも本っ当にうまい。
これ、白米食べたくなりますね。北海道産のご飯とか、ないんですか?
あー、ご飯かあ……。
メニューにないんだから、ないですよね・・・・・?
そうですねー、この店、ご飯は「持ち込み制」なんですよ。
ルールがローカルすぎるでしょ。
ほら、見てください、先ほどの大学生たちも、タッパーで白米を持ってきていますよ。
あの子たち、間違えて入っちゃったような顔してたのに、よく見ると実はめちゃくちゃ手馴れてるな。
おいしいホルモンを食べたいって思ったら、やっぱりこの店なんですよ。だからお店のルールをきちんと守って、また来たいって思う人が多いのだと思います。
たしかに食感といい、味といい、完全にクセになる味だし、リピートしたくなる気持ちがめちゃくちゃわかる店でした。通称「馬場ホル」、ぜひ行ってみてください!
一日の終わりは、なまらオシャレなバー「ベルオブリンカーン」で決まり
「馬場ホルモン」でお腹を満たした後は、近くに「由緒正しい感じのバー」があるというので、行ってみることに。
歓楽街のビルの地下、細い階段を降りていくと……
たどり着く別世界! 「うわ! これこれ!」と思わず声を出したくなるほど、映画とかに出てくる、イメージしていたとおりのバーが姿を現します。
テーブル席もあるけれど、マスターの山口さんと話してみたいため、カウンターを選ぶ。ソルティドッグをオーダーすると、グラスと一緒にロウソクもテーブルに置かれて、カクテルの色がテーブルにくっきりと映し出されます。この一連の流れ、オシャレすぎ。
旭川は、バーテンダーも多いんです。中には世界大会に出ている人もいるんですよ。
世界大会! そんな街だなんて、知らなかったです。
でも、世界大会に出たからって一生成功するわけではありません。バーを運営するためには、お酒を作る技術だけでなく、お店を経営する技術も求められるので。
なるほど、経営者が別にいればいいけど、ひとりでお店を持つなら経営力も必要なんですね。
山口さんのシブい雰囲気がたまらない。
このお店は、何年からやっているんですか?
平成元年ですね。
じゃあオープンから28年? 長いなあ……。
そんなに長い方でもないですよ。ただ、バーテンダーも後継者問題があって、老舗のバーは、どんどん閉じてしまっているんです。
そうか、バーにも後継者問題ってあるんですね。
とはいえ、旭川はもともと飲食店や商店が多いんです。この店があるサンロク街も、1,000店舗以上の飲食店がありますからね。
そんなに多いんですか!
カツセさんが想定していた「人口の5割は旭山動物園のスタッフ」論は、おそらく崩れましたね。
もうその話は忘れてもらえません?
取材だったから難なく扉を開けることができたけど、プライベートだったらなかなか立ち寄れない大人の隠れ家。こういう店が似合う大人になりたいと、強く思いました。
こうして旭川観光、1日目が終了となりました!
雄大な景色と、美味しいご飯と、強烈すぎる地元のホルモン料理店と、オトナなバーを満喫ー!(ちなみにこのサックス吹いてる銅像も、旭川の名物だそうです。ほんとかよ)
どうでした? 旭川、動物園ナシでも楽しめましたか?
来るまでは退屈で死ぬんじゃないかと思っていたんですけど、普通にデートで来ても楽しいし、女子旅行とかでも良さそうですよね。フォトジェニックな景色が続くし、あとは、やっぱり「馬場ホル」ですねえ、あれ、衝撃すぎました。
「馬場ホル」は、市の職員も普通に通っていますからね。ああいうところがあるのもまた魅力ですよね。
……と、いうことで、旭川で丸一日遊んでみましたが、
旭山動物園に頼らなくても、(今のところ)旭川はめちゃくちゃ楽しめる!!
ということが今日の限りではわかりました!
この調子で2日目もお届けしたいと思います。
後篇を、楽しみにお待ちください!!!!
書いた人:カツセマサヒコ
下北沢のWeb系編集プロダクション 株式会社プレスラボのライター・編集として書く・話す・企画することを中心に活動中。 趣味はツイッターとスマホの充電。
Twitter:@katsuse_m
やばい、めちゃ怒ってる。