まいどですっ。
Yorimichi AIRDO をご覧のみなさん、こんにちは。
大阪在住の温泉ソムリエぐっちです。
今回は北海道の東側の屈斜路湖や摩周湖の近くにある弟子屈(てしかが)町の「川湯温泉」へ行ってきました。
川湯温泉は日本に2ヶ所あり、もうひとつは和歌山県にあります。私は大阪在住のため、和歌山県の川湯温泉は何度か訪れていますが、北海道の川湯温泉は今回が初!
AIRDOで東京から女満別空港へ舞い降りて、バスと電車を乗り継いで川湯温泉へ。
もちろん今回も消毒なしのかけ流しの温泉のみをご紹介。
では、早速行ってみましょう。
川湯温泉は屈斜路湖の東側、摩周湖の西側に位置します。
こちらの温泉は日本屈指の強酸性とのこと。殺菌力が高いため、皮膚の疾患にはとてもいいようです。
また、川湯温泉は2006年6月に源泉かけ流し宣言をされた温泉地でもあります。
いざ、川湯温泉の熱源「硫黄山」へ
まずは「お宿 欣喜湯(きんきゆ)」にて、専務取締役の榎本さんと摩周湖観光協会参事の館田さんにお話をお伺いしました。
館田さん(右)・榎本さん(左):寒い中、ようこそ川湯温泉へ!
ぐっち:どうぞよろしくお願いします! 川湯温泉は強酸性の温泉と聞いてますが、そんなに酸が強いのでしょうか。
館田さん:はい、全国的に見ても非常に酸性度が高い温泉で、pHはおよそ1.7。温泉に釘を浸けておくと2週間ほどで溶けてなくなってしまいます。
※pHとは水素イオン濃度(potential Hydrogen)のことで、pHが1変わると水素イオン量は10倍異なる。酸性はpH3未満。強酸性はpH2未満。
ぐっち:まさに強酸性の温泉ですね! やはり火山性の温泉ということでしょうか。
館田さん:その通りです。近くに硫黄山という火山があり、こちらが熱源となり、摩周湖の伏流水が熱せられて湧き出している温泉です。また、川湯温泉を流れる川は温泉なんです。
ぐっち:えっ! 川も温泉なんですか! 凄い湯量ですね! 硫黄山ってこの冬場でも行けるのでしょうか?
館田さん:行けますよ。すぐ近くですので、よろしければお連れしましょうか?
ぐっち:ほんとですか! ではお言葉に甘えてお願いします!
榎本さん:では、ぐっちさん、私とは夕食をご一緒して、ゆっくりお話しましょう。
ぐっち:榎本さん、すいませんが、よろしくお願いします。では、館田さん、お願いします!
ということで、硫黄山へ。
お宿欣喜湯から車で5分弱で硫黄山に到着。
湯気がモクモクと。
こりゃ、モクモクまで行ってみたくなります。
ということで
ウォーーーーーーーー!
失礼しました。思わず叫んでしまいました。
ご覧のように、地中からガスが吹き出まくっております。
黄色くなっているのは硫黄ですね。
この地下で、温泉が作られていると思うと、ワクワクしてきます。
日本は火山が多いため温泉も多い。その反面、地震も多い。
これは自然の摂理ですね。
館田さん、ありがとうございました。
まるでレモンのような温泉?! 「お宿 欣喜湯」
「お宿 欣喜湯」に戻り、早速お風呂へ。
浴室の扉を開けると芳しい硫黄の香りが漂っています。
ただ、宿の大きさにしてはちょっと狭いな・・・と思いきや
「温泉は下へ」の看板の横に下へ続く階段が・・・
メインの浴槽は階段の下にあるようです。
おーーー!
浴槽を真上から見下ろすことってあまり無いので、思わずテンションが上がってしまいました。
浴槽が3つあり、少々白濁~薄緑に色づいた湯が満たされています。
全てもちろんかけ流し!
それぞれの浴槽で温度を変えて、ぬるめ、適温、熱めにされています。
実は源泉温度は58℃もあるのですが、熱交換器という機械を使用して水を加えることなく温度を調整されています。そのため、温泉が薄まることはありません。
温泉好きな私としましてはとても嬉しいですね。
まずは適温の浴槽から。
いやぁ~、いい湯加減!
こちらは少し白濁していました。
強酸性ですが、お湯はなんともまろやかでとろみを感じます。
そして、皮膚の弱いところが少々ピリッとします。
日本には多くの温泉がありますが、このピリッとする感覚は強酸性ならではで、なかなか味わえないんですよね。
ぬるめの浴槽へ。
これまたいいですねぇ~。
ゆっくりじっくりと入浴できます。
こちらの湯の色は少し緑色に色づいていました。
同じお湯なのに、湯使い等により色が異なる。温泉って不思議ですね。
ぬるめの浴槽の傍らに飲泉コーナーが設けられています。
では味見を。
ぬぉぉぉおおお!!!!酸っぺぇっ!
大袈裟でもなく、まるでレモンの絞り汁のようです!
さすが強酸性。
なので、沢山は飲まないように、一度にひと口ふた口ぐらいが適量ではないでしょうか。
強酸性のお湯は刺激が強いため、湯上りの際、肌が弱い方は真湯でさっと体を流したほうがいいでしょう。
たっぷりと欣喜湯の湯を堪能した後は部屋でちょっと休息。
お部屋にベッドがあるのは嬉しいですね。
そして、キンキンに冷えた水の入ったポットが置かれていました。
入浴中は思った以上に汗をかいていますので、脱水症状を防ぐためにも入浴前と後にしっかりと水分補給しましょう。
夕食の時間です。専務取締役の榎本さんとご一緒に。
どれもこれもほんまに旨いっ!
鮮度も高く、味付けも抜群!
欣喜湯の夕食、しっかりと記憶に残りました。満足される方、きっと多いのではないでしょうか。
ぐっち:欣喜湯はいつ頃からあるんですか?
榎本さん:1941年(昭和16年)に欣喜荘としてスタートしました。その後1973年に立て替え現在に至っています。
ぐっち:そうなんですね。ひとつ疑問が。欣喜湯は大きい温泉宿にも関わらず露天風呂がありませんよね。
榎本さん:実は浴室を川沿いギリギリに作ったため、露天風呂を作る敷地がないんです。また、屋上露天風呂も検討したのですが、構造上難しいようで断念しました。
ぐっち:なるほど。私としましては露天風呂も気持ちいいのですが、温泉は内湯が温泉のお湯そのものを一番味わえると思っています。
榎本さん:ありがとうございます。私としましてもこの川湯温泉のお湯の良さを来て頂いた方に感じて頂くことが一番だと思っております。
ぐっち:あの・・・欣喜湯の温泉を味わって思ったことなのですが・・・レモンの代わりに温泉水を利用して川湯ハイボールとか作られたら流行りそうですが。
榎本さん:実は当ホテルで飲泉の許可は得ているのですが、持ち出すことが出来ないんです。
ぐっち:そうでしたか・・・。話は変わりますが、榎本さんってスポーツマンって感じがするのですが。
榎本さん:実は高校時代は大阪で野球をしていました。
ぐっち:え! 高校時代は大阪にいらっしゃったんですか!
話が弾みすぎ、その後、ふたりは寒い夜の街に消えていったのでした・・・。
「お宿 欣喜湯」には素晴らしいお湯と暖かい部屋、そして美味しい食事。
大満足でした。
また、川湯温泉でお会いした地元の方のお話を聞けば「欣喜湯のお湯が川湯温泉で一番濃いんだよね。だからお風呂に行く時は欣喜湯に行くんだよね。」と。
川湯温泉に行かれた際は「お宿 欣喜湯」の湯、是非体と舌で味わってみて下さいませ。
北海道で希少な鄙(ひな)びた「川湯公衆浴場」
公衆浴場(共同浴場)は基本、地元の方々のための銭湯的温泉です。
日本の古くからある温泉地には必ずと言っていいほど共同浴場があります。
なかなかの鄙び具合ですね。
トタンで囲われた外観。正直、古いと言いますかボロいと言いますか。
しかしこういう温泉施設こそ、温泉がアタリだったりするんですよね。
特に温泉とわかるような看板はありません。
入口にはそっけない扉がひとつ。
中へ入るとレトロな空間が広がっています。
昔ながらの番台で料金をお支払いしましょう。
中で男湯と女湯が別れています。
では、男湯へ。
脱衣所もかなり年季が入っています。
強酸性のためアルミサッシも錆び錆びに。
では、浴室へ。
お~~~~~っ!
浴室はまさに温泉アート!
侘び寂びを感じます。
向かって左の浴槽が温泉。右の浴槽は真湯(温泉ではないお水)とのこと。
そして、温泉も真湯もかけ流し!
温泉をかけ流すことはありますが、真湯をかけ流しているところはとってもレアです。
では、温泉アート、じっくりご覧くださいませ。
いかがでしょうか。
長年使われ続けて来られた証と、この風情。
私が千利休だったら、ここでお茶をたてますね、きっと。
オーナーの前田さんと一緒に入湯させて頂きました。
ぐっち:こちらはいつ頃からあるんですか?
前田さん:昭和の初め頃ですね。
ぐっち:えっ! そんなに昔からあるんですね。こちら浴槽が2つあり、あつ湯とぬる湯がありますが、両方温泉なんですか?
前田さん:いや、右のぬるい方は地下水なんだよね。それを温泉で温めて37℃ぐらいにしててね。川湯は温泉も豊富だけど、地下水も豊富なんだよね。
ぐっち:とても恵まれた地域なんですね。温泉はどこから引いて来られてるんですか?
前田さん:このすぐ裏から湧き出しているんですよ。
ぐっち:こんな真横から!道理でお湯が新鮮なわけですね。
前田さん:また、こっち来たらいつでも寄りなさい。
ぐっち:はいっ! このまま、ず~っと存続して頂ければ嬉しいです。また、いつか必ず来ます! ありがとうございました。
昨今、温泉は良くも悪くも観光地化しすぎている傾向があるような気がします。
しかし、温泉とはなんぞや?
やはり温泉はお湯そのものです。
なので、私は新鮮なお湯に浸かれることが一番幸せを感じます。その上で情緒や風情、圧倒的な景観があれば、さらに嬉しいです。
皆さん、風情や景観だけに囚われていませんか?
湧き出したまんまのお湯に浸かると、きっと温泉本来の価値や魅力に気付いて頂けるのではと思います。
川湯公衆浴場の建物はかなり老朽化していますので、川湯公衆浴場に興味を持たれましたら、早めに行かれることをおすすめします。
川湯温泉唯一の貸切露天風呂が楽しめる「湯の閣 池田屋」
「湯の閣 池田屋」は川湯温泉の中心部より少し北西に位置しています。
ロビー、めっちゃ広いです。
支配人の川向さんにお話を伺いました。
ぐっち:大きなお宿ですね。
川向さん:この宿のお部屋はなん部屋ぐらいと思われます?
ぐっち:40部屋ぐらいでしょうか?
川向さん:実は12室なんです。
ぐっち:え?! これだけ大きくてロビーもこんなに広いのにですか!
川向さん:実は今お話しているロビーのある建物は旧館になり、こちらの客室は使用しておりません。奥に新館があり、そちらの12室のみで運営しております。
ぐっち:そうだったんですね。では、こちらの温泉について教えて頂けますでしょうか。
川向さん:当ホテルで使用している温泉は全て自家源泉となります。源泉はいくつかありますが、特に貸切露天風呂で使っている源泉は42℃程度で湧き出し、湯量も豊富なので、特におすすめです。
ぐっち:え? 川湯温泉って温度が高めで適温にするのに苦労されていると聞くのですが、適温の湯も湧き出しているんですね。
川向さん:幸いにも適温の源泉に恵まれ、川湯温泉で貸切露天風呂があるのは当ホテルだけとなります。ご夫婦やカップル、そして海外の方々にとても喜ばれています。
川向さん:では、まずは大浴場へご案内します。
浴室への入口にはドーンと記載が。
ここまで堂々と大きく、わかりやすく記載している施設はなかなか見かけません。
嬉しいですね。
タイル張りでとても清潔で機能的にレイアウトされています。
浴槽は4つあり、温泉は2つであつめとぬるめ。そして真湯と水風呂があります。
こちらの湯はほぼ無色透明です。味見をするともちろん酸っぱい!
そしてお湯をじっくり見ると白い糸状のものがちらほら漂っています。そうです「湯の花」です。
温泉好きな私にとっては「湯の花」はなんとも嬉しいものでございます。
まれに「湯の花」を見て、汚いと思われる方がいらっしゃいますが、ゴミではございません。そしてホンモノの温泉の証だと言っても過言ではないでしょう。
皆様、温泉に行かれて「湯の花」と出会われたら、それはラッキーです!
では、内湯に併設露天風呂へ。
塀に囲われているため、眺望はあまりありませんが、やはり外気の中で温かい湯に浸かると実に気持ちいいですね。
浴槽の色のせいか、内湯よりも露天風呂のほうが湯の花が沢山あるように思いました。
さらに。
川向さんに貸切露天風呂へ案内して頂きました。
ぐっち:あれ?貸切露天風呂以外に混浴露天風呂もあるんですか?
川向さん:そうなんです。ただ、12月から4月末までは混浴露天風呂はやっていないんですよ。
ぐっち:もうちょっと早く来ればヨカッタ・・・。
川向さん:また来て頂ける理由になりましたね。
ぐっち:は、は、はいっ!
貸切風呂への外の回廊はとても風情があるのですが、冬場は寒さ対策のためビニールシートで囲われていました。
少々風情が損なわれてしまいますが、嬉しい配慮です。
貸切露天風呂への扉を開けると
おおっ! 寒そう!
貸切露天風呂が2ヶ所。
今回は亀の湯へ。
亀の湯の露天風呂はこんな感じです。
程良いサイズで、浴槽の大きさと注がれている湯量からすると鮮度がかなり高いです。浴槽の縁には温泉成分が付着しているのが見られます。
では、いただきます!
こりゃ、いいっ!
見えますでしょうか? 白い点やら糸状のものが「湯の花」です。
ここの浴槽が一番「湯の花」が舞っていました。
もうひとつの貸切露天風呂の「鶴の湯」はこんな感じ。
また、今回こちらでは泊まっていないのですが、お部屋もちょっと拝見。
こちらは、新たに増築された建物ですので、お部屋もとっても新しく、そして広い!
さらにベッドルームもありました。
とても快適に過ごせそうですね。
お部屋にはお風呂もありますが、こちらは温泉ではないとのことでした。
「湯の閣 池田屋」は温泉にも拘り、さらに快適に過ごされたいご家族やご夫婦、カップルの方にぴったりなお宿だと思います。
川湯温泉のまとめ
皆様、川湯温泉のレポート如何でしたでしょうか。
女満別空港からレンタカーで川湯温泉へと思ったのですが、やはりこの時期雪が心配になり、電車とバスで。
ぬくぬくの電車に乗って、雪景色を楽しみながらの旅、予想以上に楽しかったです!
これ、めっちゃおすすめです!
極寒の北海道を電車に乗って、温かい本物の温泉三昧ができる冬の川湯温泉の旅、貴方の予定に盛り込んで頂ければと思います。
川湯温泉、お湯も街も人もとっても気に入りました!
川湯温泉、万歳っ!
書いた人:ぐっち
1971年生まれ大阪人の温泉ソムリエ。ある時温泉に目覚め、その後生きている温泉に拘り、書いたり、しゃべったりして活動中。 生まれたまんまのお湯に入ってみ。きっとわかるから。
ウエブサイト「源泉かけ流しどっとねっと」