Yorimichi AIRDO読者のみなさん、こんにちは。
ライターの朽木( @amanojerk )です。
いきなり六花亭の限定商品『とかち帯広発』を食べていてすみません
最近、ネットのデマがよくニュースに取り上げられています。一方で、安心してネットを使えるようにする取り組みも盛んになりつつあります。
それは「ファクトチェック」という、ウワサの内容を当事者に確認していく地道な作業。ウソはいけないので、大事なことですよね。
前回の記事でせっかく北海道に来たので、帰り道で北海道でしかできない「ファクトチェック」をしたいと思います。
それは……。
六花亭一番人気の『マルセイバターサンド』(5個入650円)(写真提供:六花亭製菓株式会社)
北海道のお土産の代名詞こと、六花亭のお菓子! あまりの人気に、ネットでもさまざまなウワサが飛び交っています。はたして、どれが本当なのでしょう。
ということでやってきました、六花亭帯広本店
北海道民の方はご存じかと思いますが、六花亭の本社工場は帯広にあります。今の帯広本店の場所にお店を構えたのは1933年。なんと80年以上の歴史があるんだとか。
そう教えてくれたのが、帯広本店副店長のまつうらさん
開店前の30分だけお時間をいただくことができたので、さっそく聞き込み開始。ここからはまつうらさんとウワサの真相を調査していきます!
ジャケットのボタンがはちきれそうなのが、わたしです
朽木:まずはこのウワサの検証です。
【ウワサ】『マルセイバターサンド』を凍らせると『マルセイアイスサンド』になる?
朽木:これは本当ですか?
まつうらさん:なりません。
朽木:そりゃそうですよね。
帯広本店と札幌本店の店舗のみで販売されている『マルセイアイスサンド』(1個200円)(写真提供:六花亭製菓株式会社)
まつうらさん:バターサンドは六花亭専用の小麦粉で作ったビスケットで、北海道産生乳100%のバターとホワイトチョコレートとレーズンを合わせたクリームをサンドしている、弊社の人気商品です。おっしゃるように、「凍らせて食べるのが好き」という声をいただくことも多く、それがアイスサンドを提供するきっかけの1つになりました。しかし、アイスサンドとバターサンドは製品としてはまったく別物です。
ところで、バターサンドの温度に関しては、他にもっと気にしてほしいことがあるんです。
朽木:ほう、何でしょう。
まつうらさん:保存方法です。裏面にも“直射日光や高温多湿を避け、25℃以下の場所で保存してください。”とありますが、意外とこれをみなさん見落としているようで。
朽木:暖房を入れた冬場の室内や夏場の持ち歩きには、実は注意が必要ということですね。
まつうらさん:はい、そうです。この場合は、クリームの状態が悪くなってしまいます。
朽木:なるほど、気をつけます。
【まとめ】バターサンドを凍らせてもアイスサンドにはならない!※むしろ保存方法に注意!
朽木:引き続き、次のウワサを。
【ウワサ】『大平原』はレンジでチンするとおいしくなる?
朽木:これは本当ですか?
まつうらさん:おいしくなります。
朽木:おっ、これは本当なんですね。
定番商品のマドレーヌ『大平原』(6個入780円)(写真提供:六花亭製菓株式会社)
まつうらさん:はい。こちらの商品は北海道産のバターをふんだんに使用しているため、固くなりやすくなっています。保存方法も20〜25℃の室温をおすすめしているほどです。ですから、食前に包みから出して、レンジで10秒ほど温めていただくと、バターの芳醇な香りが引き立ち、さらにおいしく召し上がれます。このことはパッケージの裏面にも書かれているのですが、気づかれない方も多いようですので、この機会にぜひ。
朽木:おみやげを持ち帰ったら、さっそくやってみます!
【まとめ】『大平原』はレンジでチンするとバターの風味をより楽しめる!
朽木:さて、そろそろ甘いものが食べた……間違えました。今度は、これも店舗限定のあの商品についてのウワサです。
帯広と札幌地区の店舗限定『サクサクパイ』(1本180円)
【ウワサ】『サクサクパイ』の賞味期限は3時間?
朽木:これは「賞味期限」としている情報も、「賞味期限ではない」としている情報もあったのですが……?
まつうらさん:本当です。賞味期限は美味しくお召し上がりいただける期間。衛生面からの消費期限は当日限りとさせていただいています。そのため、「サクサクの食感をたのしむために、3時間以内に召し上がっていただきたい」となります。
朽木:さすが『サクサクパイ』。サクサクへのこだわりがすごい……。
まつうらさん:もうすぐ開店ですので、ちょうど出来上がったものがありますよ。召し上がりますか?
朽木:いいんですか?(待ってました!)
クリームの断面にもこだわりがあるとのこと。
このファクトチェックは、おいしい……!
朽木:ごちそうさまでした。
まつうらさん:おいしそうに食べていただき、何よりです。
【まとめ】『サクサクパイ』の“3時間”は賞味期限!
朽木:では、最後のウワサです。
【ウワサ】六花亭のお菓子の名前は、どれも北海道にちなんでいる?
朽木:北海道の方言を使った『なんもなんも』、有名な童謡にちなんだ『雪やこんこ』などには背景を感じますが、一方で、先ほどからずっと気になっていることがありまして。
新商品『おかげさま』(1個120円)。店舗で購入できる。
朽木:このストレートな商品名にはどんなこだわりが……?
まつうらさん:よくお客様からも質問されるのですが(笑)、商品名が決定するまでにはいろいろなパターンがあり、この『おかげさま』は「いつか『おかげさま』と名付けた商品を開発したい」という構想がずっとあったと聞いています。
朽木:なるほど。では必ずしも北海道にちなんでいるわけではなく、インスピレーションというか、直感的にお菓子の名前が決まることもあるのですね。
まつうらさん:はい、あります。店頭に立つ人間としては、由来を聞かれてちょっと困ることもあるんですよ。何か深い物語を期待されていることがあるので。
【まとめ】六花亭のお菓子の名前の由来は、説明しづらいこともある!
朽木:せっかくなので、まだネットにない情報をお聞きしたいなと思っておりまして。あまりメディアに取り上げられないけれど、まつうらさんがおすすめする商品というのはありますか?
まつうらさん:おすすめですね、少々お待ちください……。こちらなどいかがでしょう。
栗餡をココアの入ったビスケットでサンドし、ミルクチョコレートでコーティングした『チョコマロン』(4個入520円)
朽木:『チョコマロン』は正直、初めて知りました! お菓子で栗とチョコレートの組み合わせというのは、あまり見ない印象です。
まつうらさん:定番商品として、地元の人気は高いんですよ。栗餡はココアビスケットに合うように、ラム酒で味を調えています。全体を包み込むミルクチョコレートは、味のバランスを崩さないように、職人が手作業でかけています。
朽木:手が込んでいますねえ。
まつうらさん:はい。ですので、決して目立つ商品ではありませんが、おすすめです。
朽木:開店前のお忙しいところにお時間をいただき、ありがとうございました!
最後に紹介してもらった『チョコマロン』を買い、帰りに空港の待合室で食べてみたところ、ビターなココアビスケットと栗のやさしい甘みがマッチして、思わずニコニコしてしまいました(誰かに見られたら完全に「危ない人」ですが)。
今回取り上げた、どうやらあまり正確でないウワサは、どれもあちこちのメディアに書かれていたことばかり。「実際に聞いてみる」って、やっぱり大切ですね。同じように、人気のあるモノゴトにも、まだまだ知らない・気づいていないことはたくさんあるはず。
みなさんもぜひ、自分の目と耳(と舌)で、北海道を楽しんでみてください!
(写真:林 和也)
書いた人:朽木 誠一郎
ライター・編集者。地方の国立大学医学部を卒業後、新卒でメディア運営企業に入社。その後、編集プロダクション・有限会社ノオトで基礎からライティング・編集を学び直す。現在はMac Fan「医療とApple」連載中。紙媒体はプレジデント/WIRED/書籍の編集協力 、ウェブはForbes/現代ビジネスなどで執筆。
Twitter:@amanojerk