~前回までのあらすじ~
仙台に降り立ったわたし、ライター 佐々木ののかは、お土産屋で買った伊達政宗の帽子をかぶって、数百年前に死んだはずの伊達政宗(伊達ちゃん)の声を聞きます。
どうやら、たまたま買った帽子に伊達ちゃんの魂が宿ってしまったよう。
一瞬「不思議だな」と思うも、早々に事態を受け止め、「観光案内してよ」と迫った佐々木ののかと、しぶしぶOKしてくれた伊達ちゃん。
奇想天外な2人の1泊2日の旅が始まりました!
▽より詳しく▽
【牛タンだけじゃない】AIRDOで行く札幌→仙台1泊2日攻略マニュアル(1日目)
国宝で写経体験! 奥州随一の禅寺「瑞巌寺」
松島に着いて、まずやってきたのは、 国宝 瑞巌寺(ずいがんじ)
伊達ちゃん
そうだ。瑞巌寺は、わたしが造った奥州随一の禅寺だ。本堂・御成(おなり)玄関、庫裡(くり)・回廊は国宝に、御成門・中門・太鼓塀は国の重要文化財に指定されている。
ののか
伊達ちゃん、寺とか神社とか色々作りすぎじゃない? お寺づくりハマってたの?
伊達ちゃん
趣味ではないぞ! ちなみに瑞巌寺と名付けたのはわたしだが、古くは平安時代に坂上田村麻呂が毘沙門堂を建てたころまで遡り、延福寺(えんぷくじ)、円福寺(えんぷくじ)と名前を変えて、今の瑞巌寺になったのだ。
ののか
ふ~ん、じゃあ伊達ちゃんが最初から建てたわけじゃないんだね。あれ? 何か今日写経をやってるみたいだよ? 行ってみよう~!
伊達ちゃん
(話を聞いていない……)
というわけで、やってきたのは瑞巌寺敷地内の大書院。
20年ほど前から毎週木曜日に、布教活動の一環で一般の方むけに「写経会」(納経料として1回1,000円)を開催しているのだそう。
今回は予約が間に合わず参加ができなかったので、写経をしている気持ちで解説します。
写経書き初めはお経を読み、姿勢と呼吸を整えた後に行います。一文字一文字丁寧に書くことで、無心に近づき、座禅と同じような効用が得られるのだそう。
ののか
心なしか、心が穏やかになった気がする。
伊達ちゃん
ただ、なぞっただけなのに!?
時間はだいたい1時間~1時間半程度。
地元の方のリピーターが多いようで、地元の方と交流をする意味でもイチオシです。
50分で松島湾一周「島めぐり観光フェリー」
瑞巌寺の次にやってきたのは、松島観光遊覧船乗り場
色々な種類の船がありますが、お目当てのものがなければ松島湾一周のフェリーに乗るのがオススメです。
当たり前と言えば当たり前ですが、50分間船に乗っているだけで、松島湾をぐるっと1周してくれるなんて便利。今回は奮発してVIPな2階席をチョイス。(追加料金 大人600円)
ののか
気分はマリーアントワネット。
伊達ちゃん
キャラに合わないことはやめるのだ!
ののか
帽子被ってないのに出てこないでよう。
伊達ちゃん
すまぬ……。
船内にはアナウンスが流れ、1つ1つの島を解説してくれます。これは「仁王島」。人が座ったように見える島で、松島湾内では最も有名な島なんだとか。
こっちは陰田島(かけたじま)。おいらんの髪にかんざしを挿したように見えることから、別称で「おいらん島」とも言われています。大震災で上部3分の1ほどが崩れてしまったのだそう。
あれは……
地図を見ましょう。実際のところ、違いがわかるはずもありません。だって、松島湾のある島は全部でこれだけあるのです。その数なんと51島 。多っ!
ちなみにさっきの島は野々島(ののじま)と言って、約70人が暮らす島。小中学校もあるそうです。名前に親近感が湧きます。
ののか
あー! 最高だなぁ~。船内でぼーっとコーヒーを飲んでいるだけで、51島制覇できちゃうとかすごくない?
伊達ちゃん
現代に生まれたかった……。
出会いと縁結びと別れの橋? 松島の「透橋」と「五大堂」周辺
フェリーを降りて、しばらく散策することに。いかにも観光名所っぽい赤い橋が出てきたので、とりあえずパシャリ。
ののか
(伊達ちゃん、伊達ちゃん……この橋は何……?)
伊達ちゃん
これは「透橋(すかしばし)」と言って、五大堂(ごだいどう)に続く橋だ。別名「縁結び橋」とも呼ばれている。
ののか
縁結び橋!? え、渡る! 渡る~!!!
伊達ちゃん
ちょっと待て! 気を付けろ!!!
ののか
イエーイ! 縁結び~!!!
ひょえ~~~!!!!!
ののか
何でこれ、こんなにスキマ開いてるの? 怖っ……!
伊達ちゃん
だから言ったのに……。江戸時代に「気持ちを引き締めて渡れ」という意味で、下が見えるよう見作られたんだ。勢い余って盲目的な恋をすると堕落するぞ。
ののか
冗談言うなら、もっとリアリティのないものにして。
ののか
ところで、この五大堂って一体何なの?
伊達ちゃん
瑞巌寺の前身となる円福寺を開いた際に、ここに五大明王像を安置したから「五大堂」と呼ばれるようになったのだ。
ののか
一応聞くけど、これも伊達ちゃん関係あるの?
伊達ちゃん
今の建物はわたしが桃山様式の粋を尽くして再建したものだ。瑞巌寺よりも先に建てたもので、桃山建築としては東北地方最古の建物となる。
ののか
へぇ~、仙台で伊達ちゃんの息がかかってない建物が見てみたいなぁ……。
伊達ちゃん
コ、コホン……。ちなみにこの五大堂のご開帳は33年に1回行われることになっておる。次回の開帳は2039年の予定……。
ののか
え! 次のご開帳のときって、わたし50歳超えてるんですけど!?!?!?
伊達ちゃん
(やっとまともに話を聞いてくれた……)
伊達ちゃん
ちなみに松島に赤い橋は3つあって、福浦島に続く「福浦橋」と雄島(おしま)に続く「渡月橋(とげつきょう)」がある。福浦橋は「出会いの橋」、渡月橋は「別れの橋」と呼ばれているぞ。
ののか
じゃあ福浦橋の前でだけ写真撮っちゃお~。
伊達ちゃん
さてはおぬし、意外とミーハーだな?
創業70年の老舗かまぼこ屋「松かま」で笹かま手焼き体験
散策していたら小腹が空いてきたので、松島名物「笹かま」のお店、「松島蒲鉾本舗」こと「松かま」にやってきました。
創業以来70年以上、宮城でかまぼこ造りを続けてきた、「松かま」さん。一口にかまぼこと言っても、「笹かまぼこ」、「お豆腐揚げかまぼこ むう」など目移りしてしまうほど、バリエーション豊かな商品が並びます。
そんな「松かま」さんの店内では、笹かまぼこの手焼き体験(1本200円/数量限定)もできちゃうとのこと。わたしももちろん挑戦してみました!
炭っていいなぁ~……。
遠赤外線が気持ちいいなぁ~。
ののか
まだかなぁ~……。
伊達ちゃん
(妙に自然に見えるのはなぜだろう……)
はい! というわけで焼けた笹かまぼこ。できるだけ水平に焼くのがムラがなく焼けるポイントのようです。
ののか
あー! 自分で焼いた笹かま、超うまい~!
伊達ちゃん
元の味が良いからなのでは……。
ののか
うるさい。
松島の「旬の海の幸」が楽しめる隠れビュースポット「さんとり茶屋」
やってきたのは1973年(昭和48年)創業の「味処 さんとり茶屋」さん。2階席の窓際からは松島湾が臨めるビュースポットでもあります。
注文したのは、「松島穴子丼」(1,730円)
11月くらいまでが旬という穴子は松島名物の1つ。テラテラと光る甘ダレは、見るものすべてを誘惑してきます。
わたしもまんまと誘惑されました。
他にも、松島の名物である「カキフライ定食」(1,730円)や
「カキ殻焼き」(650円)もありました。
今回は時期的に食べることができませんでしたが、10月前半から獲れ始めるという松島のカキをふんだんに使い、カキ殻焼きとカキフライ、カキポン酢が付いてくる「カキ三昧定食」(2,040円)の人気が高いのだとか。
このほか、3月末からはめかぶ、夏にはウニといくらが出るなど、松島の四季が味わえるさんとり茶屋さん。
おいしいものでお腹がいっぱいになったところで、松島とはお別れ。
ののか
松島良いところだったねぇ……。
伊達ちゃん
旅の終わりが近づいてくるなぁ……。
ののか
(あれ? 伊達ちゃん? 寂しがってる?)
展示方法がユニークな仙台の新名所「仙台うみの杜水族館」
松島から車を走らせること30分ほど。仙台市内に戻って訪れたのは、「仙台うみの杜水族館」! 2015年に建てられたばかりのこの水族館は、心なしかまだ新しい匂いがします…!
新しいのは建物だけではなく、展示方法にも工夫が凝らされているのも、この水族館のウリ。
例えば、「日本のうみ-東北のうみ」ゾーンが始まるこの最初の水槽から。頭の上に水槽があり、得体の知れないものが浮いています。
ん? パイナップル!?!?!?
伊達ちゃん
説明しよう。これは、マボヤと言うホヤの仲間で、「海のパイナップル」とも呼ばれているのだ。
ののか
どうりで見た目がパイナップルなわけだね。
伊達ちゃん
注目すべきはマボヤだけではないぞ。この三陸の海を切り抜いたような美しい大水槽には約50種25,000尾が泳いでいる。
ののか
そんなにいるの!? すごい!
伊達ちゃん
それから1日に2~4回、音楽に合わせてマイワシが泳ぐ「Sparkling of Life」も見どころでな……!
ののか
へぇ~……てか、何でそんなに詳しいの? テンションも上がってる気がするし……。伊達ちゃん、もしかして魚好き? かわいい!
伊達ちゃん
……もう喋らんぞ。
その後も、
ユニークな展示が続き、
童心にかえって、
はしゃぎまくったわたし。
自分が色を塗った魚の絵が投影されるスクリーンもあり、子どもたちに混じって釘づけになること5分。
伊達ちゃん
おぬし、ちょっとはしゃぎすぎではないか?
そのほか、イルカ・アシカのパフォーマンスや、ペンギンにごはんをあげられる「ペンギンフィーディングタイム」や、イルカにさわって一緒に写真が撮れる「イルカタッチ&フォト」などふれ合えるオプションプログラムも充実している、仙台うみの杜水族館。
子どもみたいにめいいっぱいはしゃいで、仙台市内へ向かいます。
「壱弐参・文化横丁」でお通しがデラックスすぎるディープな酒場に出会った
飛行機に乗る前の、仙台観光のフィナーレを飾るのは「横丁めぐり」。仙台の中心街には「
「文化横丁」の2つがあります。
いろは横丁は「1番町2丁目3番地」という住所が、文化横丁は近くに「文化キネマ」という映画館があったことが由来。
また、いろは横丁は服屋さんなどを含めて100軒以上、文化横丁は飲食店が50軒程度、立ち並び、仙台の夜を活気づかせています。
目移りしながらも、良さそうなお店を探して歩き回ること20分。
何だか気になるお店を発見しました!
ののか
伊達ちゃん、このお店、常連じゃなくても大丈夫かな?
伊達ちゃん
確かにどこか敷居が高そうだ……。
???
早くいらっしゃ~い!
ののか
何か呼ばれてる……??
おかみさん
いらっしゃ~い!
ののか
こんばんは……初めてなんですけど入れます?
おかみさん
当たり前よ~、はい、座って座って!
ののか
わ~、ありがとうございます~! ビールお願いします! あれ? 食事のメニューがない……??
おかみさん
うちは食べ物のメニューがなくて全部お通しなのよ。まぁ座ってて。ゆっくり出すから。
ののか
はーい……???
そうして待つこと3分。
いくらなんでも出し過ぎじゃないですか……??
ののか
あの、こんなに出してもらって会計不安なんですけど、大丈夫ですか?
おかみさん
大丈夫大丈夫。まぁまぁ食べて。
ののか
いただきます……不安……。
あは、超おいしい。
ののか
いや~、おいしい。ビールが進みますねぇ。
伊達ちゃん
おぬし、気を抜くなよ。そもそも飲み過ぎなのでは?仮にもこれは取材……。
ののか
そうだった! 取材!
というわけで、お仕事に戻ります。
女将さんに聞くところによれば、この驚くべきほどの量が出てくる「勝手にデラックスお通し方式」は、お店を続けていく中で編み出されたものなのだそう。
1人で店を切り盛りするのは大変だということや、たくさんまとめて作って、お客さんに安く料理を出してあげたいという優しさから今のスタイルに落ち着いたとのことでした。
夜が深まるにつれて、徐々に常連さんであふれかえる店内。
話し上手な女将さんとの会話が楽しく、名残り惜しかったのですが、フライトの時間が迫ってきています。
ののか
お会計お願いしまーす……(お金あるかな?)
おかみさん
はーい、2,000円ね!
ののか
嘘でしょ?
おかみさん
嘘じゃないよう、2,000円です。
ののか
この店の近所に住みたい……。
旅の終わりに
空港に向かう途中、わたしはこの仙台1泊2日の旅を振り返っていました。
この2日間で、
「おいしいもの」をたくさん見つけて、
普段できない「体験」をし、
きれいな「景色」を見ました。
ののか
伊達ちゃん、仙台ありがとう。またね。
札幌(新千歳)⇔仙台間はAIRDOで1時間強。
来たくなったら、土日でまた来よう。
そう決意して、仙台の思い出を頭いっぱいに詰め込みながら、わたしは帰りの飛行機に乗ったのでした。
※この記事は宮城県による提供記事です。
書いた人:佐々木ののか
1990年生まれ、北海道音更町出身。高校までを十勝で過ごし、大学進学を機に上京。1年間のフランス留学を経て、現在は東京を拠点にライターとして活動中。2カ月に1度は帰省するほどの地元好きで無類のお酒好き。帯広のソウルフード「インデアンカレー」はシーフード派。
Twitter:@sasakinonoka
ののか
ねぇねぇ。瑞巌寺も伊達ちゃんが関係しているの?