Yorimichi AIRDOをご覧の皆さま、こんにちは。パフェ評論家の斧屋(おのや)です。日本で唯一のパフェ評論家として、日夜パフェを食べつつ、その魅力を伝えるために活動しています。昨年(2016年)は年間で415本のパフェをいただきました。
さて、そんな私がいま注目しているのが北海道札幌市のパフェです。お酒を飲んだあとにシメのラーメンではなく、パフェを食べるという「シメパフェ文化」が、札幌・すすきのエリアを中心に盛り上がりを見せています。
もともと北海道はアイスクリームがおいしいこともあり、以前からお酒とパフェを提供するお店はあったものの、ここ数年で夜にパフェを提供するお店が一気に増えました。
特に女性にとっては、ラーメンよりも軽いパフェがシメにちょうどよかったという事情もありそうですね。
今回は、私が特にオススメする札幌のシメパフェ5店舗と、そのパフェの魅力に迫ります。
パフェテリア パル
―細かなパーツが生み出す五感の至福―
1軒目は、「夜パフェ専門店」を名乗る「パフェテリア パル」。
バースタイルのお店で、パフェは素材にこだわり、お酒との相性も考えて作られています。平日深夜でも満席となる人気店で、昨年にはお店を拡大しました。
常時6~7種類のパフェメニューを提供していて、3週間~2カ月ほどのスパンで新しいメニューへと次々に展開していきます。
パフェの各パーツはそのパフェのためだけに使われていて、他のパフェのパーツとほとんど重複してないんです。ひとつひとつのパフェにテーマがあって、それに合った素材が使われている、徹底したこだわりがあります。
パルで主に使われるグラスは縦長。層が細かく分かれていて、その流れを楽しむように食べます。
「宮崎マンゴーとフロマージュブランのパフェ」(1,500円)。
このパフェはグラス上部にフロマージュブラン(ヨーグルトのようなチーズ)、チョコレートジェラート、宮崎マンゴーと濃厚な味わいで始まりますが、中ほどからキウイとマンゴーのコンカッセ(粗く刻んだもの)、タピオカとチアシードのジュレといったさっぱりした素材に移り変わっていきます。
素材の細かな移り変わりによって食感や風味の変化が生まれて、五感を総動員してそれを楽しんでいる間に、ぺろりと食べ終わってしまいます。
出てきたときは縦長のパフェが大きく感じるのに、もう一個いけそう、みたいになるんだよなあ。
この長いパフェスプーンで掘り進めていくのが楽しいんですよね。
<SHOP DATA>
- 夜パフェ専門店 パフェテリア パル
- 住所:札幌市中央区南4条西2丁目 南4西2ビル6F
- 電話:011-200-0559
- 営業時間:18:00〜26:00(LO25:30)
- 定休日:なし
- URL:夜パフェ専門店 パフェテリア パル
パフェ、珈琲、酒、佐藤
―デザイナーがパフェを創るとこうなる―
店名の真っ先に「パフェ」が付く、「パフェ、珈琲、酒、佐藤」。
初めて行くと、ちょっと分かりづらい路地裏にあります。でも、なんか行列ができているから、あそこかあ、と分かるシメパフェの人気店。
元デザイナーの方が始めたお店だけあって、お店の中のあらゆるデザインが美しい。のれんや座布団やお品書きやコースターが、かわいい。いろんなところにお店のロゴにも使われているさくらんぼちゃんがいます。
レギュラーメニューの「塩キャラメルとピスタチオ」(1,188円)。
まずは、美しいですね。グラスの下に落ちる影まで美しい。
アーモンドのチュイール、キャラメルアイスの上には黒塩、そしてピスタチオアイス。カシスのムースの下に自家製ソフトクリーム、最後はリンゴジュレです。
食べ始めはアーモンドとキャラメルとピスタチオで、それぞれくっきりと味の輪郭がついていて、コントラストがはっきりしています。それが下に進むにつれ、だんだんにすっきりと。
見た目のみならず、どう味わってもらえるかまで、しっかりデザインされているんですね。
期間限定のパフェ「メロン ライムとミント」(1,598円)。
年に何度か、期間限定のパフェが出ます。今回は運よく、メロンのパフェをいただけました。昨年札幌に来たときは食べられなかったのでうれしい!
メロン、ライム、ミントの3つの素材を、果肉やソルベ、ムース、グラニテ(シャーベット状の氷菓)、ゼリーとさまざまに形を変えて味わわせてくれるすばらしいパフェです。
それより何より、まずこの帽子が気になりますね。ホワイトチョコで作られたこの帽子、メロンを思わせる美しいビジュアルであり、また麦わら帽子のようでもあります。帽子の中を透かし見るのも面白いですね。
そしてこのチョコ帽子は、脇に置いておいてパフェの途中途中で食べることで、酸味とのバランスをとることができるんですね。特にライムとミントのグラニテはかなり酸味が強く刺激的でしたが、そこでちょいとこの帽子をかじると、またおいしいのでした。
<SHOP DATA>
- パフェ、珈琲、酒、佐藤
- 住所:札幌市中央区南2条西1丁目6-1 第3広和ビル1F
- 電話:011-233-3007
- 営業時間:【火〜木】18:00〜24:00、【金】18:00〜26:00、【土】13:00〜26:00、【日】13:00〜24:00(LOは閉店の30分前)
- 定休日:月
- URL:パフェ、珈琲、酒、佐藤
スイーツバーMelty
―オーダーメイド型パフェは悩むから楽しい―
2010年オープンの「スイーツバーMelty」は、「シメパフェ」という名前が付くだいぶ前から、夜にパフェを提供してきました。女性オーナーが、「女子会や二次会で、お酒も飲めて、お茶もできて、パフェも食べられるお店があったらいい」と思い、自分でそんなお店を作ったのだとか。
最近は海外や道外のお客さんも多いという人気店です。
オーダーシートで中身を選べる「マイパフェ」(1,080円)が、人気の理由。
ジュレ、フルーツ、ジェラート、トッピング、パフェにかけるリキュールまで、自分好みに中身をオーダーメイドできるのが楽しい。
いざ、自分で頼もうとすると、あーでもない、こーでもない、と悩む悩む。どうでもいいことで悩む幸せ。1人でもこうなのだから、みんなでわちゃわちゃ考えていたら、それだけでもう楽しいに決まってます。
今回は、フルーツはアロエ、ジェラートはココナッツ、リキュールはライチで、南国風のアレンジにしてみました。
オーナーさん自らたくさんの組み合わせを試しているから、そんなにおいしくない組み合わせはないと言うけれど、せっかくだから何かテーマに沿って仕上げたいのです。あ、店員さんがパンダの顔を作ってくれた!
食べてみると、ほーら、やっぱりうまい。
お店の雰囲気に仮面がマッチしていました(笑)。
それはさておき、このお店の特徴はなんといってもサービス精神旺盛なところ。店員さんが気さくに話しかけてくれるし、ポテトチップスがサービスで出てくるし、アイスクリームで動物の顔を作ってくれるし。
そして、パフェに使うジュレやジェラートはほぼすべて手作りだそう。一見、重そうに見えるパフェですが、そんなことはなくて、砂糖控えめで作られています。
こんど来たときはどんなパフェを作ろうかな、と考えながらお店を出ようとしたら、帰りにアメちゃんをもらいました。
最後までお客さんに楽しんでもらいたいというサービス精神にあふれたお店なのでした。
<SHOP DATA>
- スイーツバーMelty
- 住所:札幌市中央区南4条西5丁目8 F-45ビル 9F
- 電話:011-522-5755
- 営業時間:18:00〜6:00(LO)
- 定休日:12月31日、1月1日
- URL:Sweets Bar Melty
HASSO Dolceteria Hokkaido
―料理の延長としての、香り際立つパフェ―
ミシュランガイドで星を獲得したイタリアレストラン「TAKAO」の姉妹店。イタリア料理がおいしく、デザートも充実しているワインバーです。デザートとお酒のセットもあり、0次会から最後のシメまで利用できるお店。
料理の延長としてとらえ、温度や香り、味の変化を大事にしているというパフェ。デザートメニューの中でもパフェの独創性と完成度は感動的です。
ひとつひとつの素材がおいしいのはもちろん、他の素材とのマリアージュ、またお酒とのマリアージュを考えて作られています。
「栗山 岩﨑農場 ルバーブのパルフェ 香り立つハーブと酸味のコントラスト」(1,500円)。
ルバーブのソルベの上に、スライスして乾燥させたルバーブ。中はホワイトチョコがけしたライスパフ、カモミールのムース、ジャスミンのジュレ。
「HASSO」のパフェは、3種類ほどの素材でシンプルなマリアージュを楽しむようにできています。あえて層を作らず、他の素材との混ざり合いを促していきます。
ルバーブの酸味、カモミールとジャスミンの香りは、クラクラとめまいのするような幸せです。
「南高梅のソルベ 酸味とナッティな香りのコントラスト」(1,500円)。
南高梅のソルベ、赤しそで作ったジュレ、杏仁のパンナコッタ、 ヘーゼルナッツのキャラメリゼ。梅、杏仁、ヘーゼルナッツという「種しばり」でまとめた逸品。上の飾りは、練った米粉に梅干しを混ぜて焼いたもの。
梅のソルベがおいしすぎて、にんまりしながら食べました。
「HASSO」のパフェはシメに食べるのにちょうどいい量ですが、もしパフェだけを食べに行ったら、おいしすぎて何個も食べてしまいそうです。
<SHOP DATA>
- HASSO Dolceteria Hokkaido
- 住所:札幌市中央区南2条西5丁目SCALETTA 3F
- 電話:011-231-7778
- 営業時間:16:00〜24:30、【月火木】16:00〜25:00(LOは閉店の30分前)
- 定休日:水
幸せのレシピ〜スイート〜
―エンターテインメントとしてのパフェ体験―
パフェ専門店「幸せのレシピ ~スイート~」。このお店は何といっても独特のメルヘンチックな世界観が楽しい。
メニューブックを見ると、パフェメニューには「濃厚ピスタチオ 木の実の宝箱」「ラムレーズン オオカミの夜散歩」など、何かに見立てた名称がつけられていて、そのイメージに合ったイラストが添えられています。また、季節によってメニューチェンジをおこなうので、行くごとに新鮮な驚きがあります。
パフェの主役は、お店のオリジナルジェラート。2~3種のジェラートの組み合わせと、メニューによっていろいろな形状のパフェグラスを使うことで、それぞれ個性的なパフェに仕上がっています。
夏期限定のメニュー「レモンと魔法のランプ」(1,880円)は、実験的で楽しいパフェ。1日5食限定。
レモンが中央にでんと居座る独創的なビジュアルのパフェと一緒に、何やら一粒乗っているランプと砂時計が登場。食べる前から、不思議な高揚感を感じます。
あれ、これ、食べ物を食べる前の気持ちじゃないよ。
ランプに乗っている果実はミラクルフルーツ。食べると酸味を一時的に感じにくくなるという「魔法の実」です。このパフェは、「魔法の実」を3分間口の中で転がしてからレモンを食べると甘く感じる! という味覚の変化を遊ぶパフェなんですね。
パフェの中身はレモン果肉とレモンソルベ、オレンジソルベという超シンプルな構成。
レモン果肉をまずはそのまま味わって、酸っぱさをちゃんと味わってから、「魔法の実」の効果を試してみましょう。
効果には個人差があるようで、私は酸味がゼロにはなりませんでしたが、普通にレモンが食べられるようになるという不思議な体験ができて楽しかったです。
そう、体験ですね。食べるというより、「エンターテインメント」というのがふさわしいパフェでした。
<SHOP DATA>
- パフェ専門店 幸せのレシピ〜スイート〜
- 住所:札幌市中央区南3条西4丁目ビッグシルバービルB1F
- 電話:011-596-9852
- 営業時間:19:00〜27:00、【土日祝】11:30〜27:00(LO26:00)
- 定休日:なし
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いかがでしょうか。紹介した5店舗はそれぞれに個性があり、お店のスタイルがそのままパフェにも表れているような、我が道を行く独創的なものばかりでした。また、自分はあまりお酒を飲まないのですが、そういう人でも楽しめるお店となっています。
札幌に行かれた際は、ぜひパフェのお店へ。そしてお腹と心が満たされるまで、「シメパフェはしご」をしちゃってください!
※すべて税込み価格です。
※パフェのメニューおよび価格は、取材時(2017年6月)時点のデータです。期間限定のものは販売終了している可能性がありますのであらかじめご了承ください。
書いた人:斧屋
パフェ評論家、ライター。「パフェはエンターテインメント」という視点から、ブログで独自のパフェレポートを執筆。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベントなどで活動しています。2015年3月に著書『東京パフェ学』を出版。
Twitter:@onoyax
blog:パフェ評論家 斧屋(おのや)の「パフェ道」
編集:はてな編集部