こんにちは! 中村朝紗子(@nakamuraasako)です。
北海道の“絵になる”を集める #フォトジェニックハント の旅。これまで10本以上のレポートを書いてきましたが、実はまだ、降り立っていない空港が1つだけあったんです。
羽田空港から約100分のフライト。銀世界が広がる冬の北海道を目指します。この日は空気が澄んでいて、飛行機の窓から、富士山がくっきり見えました。ラッキー!
到着した最後の就航地、それは…釧路空港!! 旅のおともをしてくれるのは、佐藤桃子さん。
「父の実家が札幌だけど、釧路は初上陸!寒さに負けず、楽しむぞ〜!」
旧千円札のモデルになった丹頂の里
まずやってきたのは、空港から車で約30分「阿寒国際ツルセンター グルス」です。ここは、丹頂の保護や情報発信を目的とする研究施設。今シーズンは150〜200羽の丹頂がこの地を訪れているそう。
センターを抜け、給餌場へ出るとたくさんの丹頂が! 奥には阿寒の山並みが伸びゆき、開放的な景色が広がっています。
今やこうして近くで見られるようになった丹頂ですが、その昔「絶滅した」と言われたことも。1950年、ここで農家を営んでいた山崎さんがトウモコロシを撒いたところ、数羽の丹頂がそれをついばみ、以来、毎年丹頂が訪れるようになりました。給餌の様子は、毎朝8:30に公開されているので、見たい人は早起きを!!
ところでみなさんは、丹頂の鳴き声って想像つきますか? 私も驚いたのですが、結構鳴くんです、この子たち。「コー」「カッカッ」と交互に響く鳴き声は、オスの呼びかけにメスが答える、いわば会話のようなもの。夫婦で声を上げることで、縄張りを周りに知らせているそうです。
すぐそばにある分館・タンチョウ観察センターは、冷えた体を温めてもらおうと小さなカフェスペースや、無料でのぞける望遠鏡が置かれていました。このレンズにスマホカメラを近づけると…!
なんと、本格的な望遠カメラで撮ったような写真がスマホでも撮れちゃいます! ぜひお試しあれ♪
センターに戻り、展示コーナーへ。ここでは丹頂の生体やその歴史、貴重な資料が展示されています。見るだけではなく、触ったり聞いたり、五感で楽しめる工夫もいっぱい。
桃子さんが持っているのは、丹頂の卵(実物大)。私は、人間が「代理親」としてひなを飼育していたときの再現コーナーを体験。親の頭を模したグローブで、餌をあげていたとは…!(パペットマペットを思い出しました。笑)
世界には15種の丹頂が生息していますが、そのうち11種は絶滅の危機にさらされているそう…。現在、丹頂の多くが北海道東部に生息していますが、環境の変化に敏感で神経質な生き物のため、こうした施設での保護活動や啓蒙が、とても大切なんですね。
ちなみに、昭和59年(1984年)に発行された千円札を皆さんは覚えていますか? そう、2羽の丹頂が羽を広げていた姿です。あの図案は釧路の写真家・林田さんが、ここ阿寒で撮影した写真がもとになったそうですよ。
中央の縁は卵を表していて、向き合う2羽の丹頂がまさに「カー」「コッコ」と泣き合っている様子を捉えたもの。小さな頃から馴染みが合ったこのお札のルーツにも出会えて、ちょっと感慨深い体験となりました。
阿寒国際ツルセンター●北海道釧路市阿寒町上阿寒23線40番地●0154-66-4011●9:00〜17:00(観察センター:11月1日〜3月31日のみ営業●8:30〜16:30(11〜1月は16:00)●年中無休●大人470円、子供(小・中学生)240円、団体料金、年間券有。
体を温めるアイヌの味に舌鼓!
続いてやってきたのは「アイヌコタン」。丹頂の里から車で約1時間で到着です。
「アイヌコタン」とは、 北海道の先住民族であるアイヌの人々が暮らす集落のこと。 いまでも30戸・約100名がここに暮らし、工芸店やカフェ、おみやげ屋さんなど様々な形でアイヌ文化を伝えています。
雪景色の中で、木造のあたたかさがより引き立つウェルカムアーチ。ランチに訪れたのは、民芸喫茶「ポロンノ」。アイヌ紋様の扉がかわいい!
店内は長細いつくり。手前にはテーブル&チェア、中央には円卓が置かれた座敷、奥には5席ほどのバーカウンターがあります。かつてはおみやげ屋さんとしてスタートした「ポロンノ」ですが、娘さんが喫茶店をスタート。隠れ家のような雰囲気は、その名残なのかもしれません。
ここでは、阿寒の山の恵み海の恵みを存分に生かした 伝統的なアイヌ料理から独自のオリジナル料理まで、身体においしい心に楽しいアイヌ料理をいただくことができます。
長い年月をかけて、スタッフやその家族がDIYして作り上げた内装は、お料理を待っている時間さえも楽しませてくれます。見たこともない楽器や祭器に、目を奪われる桃子さん。
「まるで海外旅行に来たみたい…!」
ランチにいただいたのは、店長オススメの「ユク(鹿)セット」(税別1,000円)。
昆布と塩だけでシンプルに味付けたユクオハウ(鹿汁)は、山菜たっぷり素材の旨味を存分に引き出した、どこか懐かしいお汁。その左、アマム(炊き込みごはん)は、ほんのりした甘さの中に豆・いなきび・キトピロの風味が薫り立ち、腹持ちの良いもちもち食感。奥の小鉢は、鮭1本から一筋しか取れない希少なめふん(鮭の血合いの塩辛)です。
また、ポロンノに来たらぜひ注文して欲しいのが、アイヌのお茶。これが、独特の風味で今でも忘れられません…!
左はキハダの実をつかった「シケレべ茶」(胃や喉に効く)、右は白樺に生える幻のキノコをつかった「カバノアナタケ茶」(免疫強化作用がある)。どちらも山や土、大地の恵みが染み出したような力強い味わいでした。
この日、お迎えしてくれた郷右近好古(ごううこん・よしふる)さんと、そのお嬢さん。岩手出身の好古さんは、ここ阿寒の地に魅了され移住した1人なのだとか。
「冬になると全面凍結する阿寒湖では、スキーやスノーシューなどのアクティビティ、温泉、グルメなど楽しみがたくさんあります。ぜひ真冬だからこその体験を、楽しんでいってくださいね」
ポロンノとは「大きい」「たくさん」という意味。お腹も心もたっぷり満たされて、午後はアイヌコタンの街を散策します!
民芸喫茶ポロンノ●阿寒湖温泉4-7-8●夏季4月29日~10月末/10時~23時 冬季11月1日~4月下旬/12時~21時30分(来店時は電話確認が確実)、不定休●0154-67-2159
アイヌ伝統工芸を体験!
アイヌコタンの坂を登り、「阿寒湖アイヌシアターイコロ」を目指す私たち。しかし、その道のりは大変ハードでした…!!
勾配の高い坂道は、ファッションブーツでは滑る、滑る!「大丈夫だろう」と楽観視していたことを後悔させられました…。冬に訪れる人には滑り止めの靴、靴の上からつけられるバンドタイプの滑り止め(近くの温泉宿などで売っています)が必須です!
坂を登ると、アイヌの伝統的な建築「チセ」を見ることができました。自然木をつかったシンプルな木造建築。趣きがあってすてき…!
ようやく辿り着けた阿寒湖アイヌシアターイコロ。ここでも、大きなフクロウがお出迎えしてくれます。
ここでは、アイヌの伝統的な木彫りや楽器づくりを体験することができます(原則5名以上から予約可)。私たちが体験させてもらったのは、「工芸木彫り体験」です。
アイヌコタンの彫り師が先生となり、伝統的なアイヌ文様を板に掘っていきます。この文様はかつて、魔除けの効果があると信じられ、洋服や建築、さまざまなところに掘られてきたそう。
好きな絵柄を選んだら、それを木の上に重ね、ボールペンで線をなぞって木に写していきます。続いて、ボールペンの線に沿って彫刻刀を滑らせます。集中力が試される作業でした。
実際にやってみると、一度掘ってしまえば二度と戻らない緊張感や細かな作業の積み重ねに、職人さんへの敬意がわいてきます。
「せっかく来たから」と体験させてもらったアイヌの伝統楽器「ムックリ」作りも体験させてもらいました。丸く開けた口の前で構えて、中央に括られた糸を引く反動で音を鳴らす口琴です(パネルの下)。
こちらが完成品! 夜にはこの場所で、アイヌ古式舞踊の講演を行われます。私たちもこのあと参加するのですが、そこでムックリの美しい音色に出会うことになるとは、つゆ知らず…。
阿寒湖アイヌシアターイコロ●北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-84●0154-67-2727●工芸木彫り体験(おひとり様 1,400円、所要時間60分)、ムックリ製作体験(おひとり様 1,200円、所要時間60分)※いずれも5名さまより受付●https://www.akanainu.jp/about/ikoro
レイクビューが圧巻の人気温泉宿
この夜、宿泊したのは阿寒湖の東に佇むホテル「あかん遊久の里 鶴雅」です。 阿寒湖と雄阿寒岳をパノラマで一望できる客室・温泉を誇る、人気のホテルです。
鶴雅には和洋多種多様なお部屋がありますが、私たちが宿泊したお部屋は別館の「和洋室」。窓の外には、阿寒湖の眺望が広がっていました。これぞオーシャンビューならぬ、レイクビュー!!
さらに驚くべきは、阿寒湖で開催される真冬の風物詩「阿寒湖氷上フェスティバルICE・愛す・阿寒 冬華美」を、お部屋から楽しめるところ。-20℃の澄んだ夜空に輝く花火は、ため息が出るような幻想的な美しさ。湖上から打ち上げるので、他にはない特大サイズの花火が楽しめます。
この絶景がお部屋から楽しめるなんて…なんたる贅沢なんでしょう。ちなみにこのロケーションで花火が楽しめるのは、別館・展望風呂付和洋特別室、別館・温泉付展望特別室、別館・和洋室、湖側グループ客室です。宿泊時にはぜひ検討を♪
旅の醍醐味である露天風呂は、阿寒湖との一体感を満喫できる庭園露天風呂「豊雅殿」(左)と、阿寒湖と阿寒連山の絶景パノラマに抱かれる空中露天風呂「天女の湯」の2つ。お湯に浸かりながらも髪が凍るという(!)、冬の釧路ならではの珍体験に笑い転げた私たちでした。
あかん遊久の里 鶴雅●北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4-6-10●0154-67-4000●そう客室数225室・1028名収容●泉質/単純泉
阿寒湖氷上フェスティバルICE・愛す・阿寒 冬華美●阿寒湖氷上特設会場●開場19:30、花火打ち上げ20:10〜●無料(飲み物などは有料)●3月3日まで●http://ja.kushiro-lakeakan.com/things_to_do/1855/
文化遺産登録のアイヌ古式舞踊ライブ
1日の締めくくりは、再びの「阿寒湖アイヌシアターイコロ」へ。日が沈むと気温も下がり、この時-19度。2人とも、生きてきた中でもっとも寒い夜を過ごしました。
この日上演を見ることができた「アイヌ古式舞踊」は、国の重要無形民俗文化財に指定され、ユネスコ世界無形文化遺産にも登録されています。歌と手拍子、そしてお昼に作ったムックリが奏でる波打つような不思議な音色が響きます…。
その中で繰り広げられるのは、神や先祖、自然に感謝を伝えるアイヌの人々の舞踊です。羽織をめくり背負うようにした姿が印象的な踊りは「サロンカムイリムセ(鶴の舞)」。まさに今朝、私たちが見てきた丹頂がアイヌの人々の暮らしのそばにあったんですね。
こちらは「ク・リムセ(弓の舞)」。狩人が狙った鳥の飛び舞う姿が美しすぎて、終いには撃てずに帰ったことがモチーフになっているそう。目配り、足の踏み込みに気迫があふれていて、グッと引き込まれます。
後半に披露されたムックリの演奏も、忘れられません。口の形、舌の位置、呼吸や糸の弛緩によって、表情豊かに奏でられる音色。その昔、釧路の大自然にも同じ音が響いていたと思うと、神聖な気持ちになりました。
最後は踊り手さんがお見送りをしてくれます。アイヌの皆さんが、今もこうして受け継ぐ舞踊や文化。教科書で見ていた「アイヌ」の文字が目の前に立体的に広がった1日目。とても貴重な体験に溢れる、充実した旅の始まりでした。
阿寒湖アイヌシアターイコロ●北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-84●0154-67-2727●公演内容、開演時間は日替わり。詳しくはサイトからご確認ください
●https://www.akanainu.jp/tr-dance
続編・2日目は、噂のフロストフラワー探しやワカサギ釣り、スノーモービルなど釧路のスノーアクティビティを満喫します!ぜひ合わせてお読みください!
▼2日目の記事はこちら
▼3日目の記事はこちら
書いた人:中村朝紗子
株式会社 Morning Labo 代表、撮影女子会ファウンダー&プロデューサー。女性誌でのライター経験を生かし、撮影女子会を軸としたフォトジェニック空間やイベントの企画・プロデュースを手がける。特技は少林寺拳法(高校時代全国2位!)、趣味はオムライス食べ比べ。本サイトではインスタ映えするコト・モノを探る連載「北海道のフォトジェニックハント」を担当中。
Twitter:@monichild
instagram:@nakamuraasako